春、恋に落ちて。

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家に帰る最中のタクシーの中でもだいぶ酔っていたからか、玉森裕太はわたしにくっついたりしてきて変に意識してしまう。




最近忙しくて家に来たのは久しぶりだ。





それだけでどきどきしていたのに
玄関を開けた瞬間、玉森裕太がわたしを壁に追いやってキスしてきた。




突然のことに頭が回らない。




「っはぁ…A、お風呂いこ…」




「えっお風呂？」




「ん、一緒に入ろ」




一緒に入ったことなんかない。
酔っているからかなんかいつもと違う。




家の中へと入ってお風呂を沸かしに行った玉森裕太についていく。




「一緒になんかはいったことないじゃん？
はずかしいんだけど…」




「一緒に入りたい気分なの。」




大きな瞳で見つめてくるから…
断るに断れない。




我慢していても「気持ち」はちゃんとあるわけで。
わたしは玉森裕太のことを都合の良い関係とは思えない。
たとえ向こうがそう思っていたとしても。




お風呂が沸いて、わたしが先にシャワーを浴びて湯船で待っていたら脱衣所に玉森裕太が入ってきた。




玉森裕太の家のお風呂はガラス張りで丸見え。
いつも見ているとはいえ、服を脱いでいる姿を見るのは恥ずかしい。




体を洗い湯船に入ってくるなり、向かい合って座っていたわたしをひょいっと自分の足の上に座らせる。




向かい合って密着する形。
それだけでどきどきが止まらない。




「ふふっ、なに照れてんだよ笑」




「いや、恥ずかしいでしょっ。
こんな風に明るいとこで裸見るのは初めてだし…」




「そっか、いつも電気消すもんね。
ちょっとぎゅってしていい？」




「ぎゅっ！？」




いつもの玉森裕太なら絶対に言わないようなセリフ。




「なに？悪い？」




まっすぐにわたしを見つめるから拒否すらできない。




「裕太なんかいつもと違うよ？酔ってる？笑」




「うん、酔ってる。
だから甘えたくなる。」




そんな素直な玉森裕太に胸がぎゅっと締め付けられる。




「…いいよ甘えて。」




そういうとにこっと笑って抱きついてきた。




都合が良くなるのもわかるけど、
いまは甘えて欲しい。
いまだけはわたしがあなたを癒してあげたい。




「…俺さ、理央のことまじで好きでさ。
ゾッコンだったんだよね。」




わたしに甘える玉森裕太の口から出てくる
わたし以外の人への気持ち。




傷付く、その話は今聞いたら傷付く。




でも玉森裕太は話すのをやめなかった。

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