春、恋に落ちて。

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玉森裕太からの連絡で自分がピアスを忘れてきてしまったことに気がついた。




わざと置いてくようなあざとい女だと思われたりしてないかな、大丈夫かな。




…なんて、考えすぎか。笑




また会える口実になったしよかったかも、って思ってる自分もいる。




好意じゃない、そう言い聞かせる。




タチの悪い遊び人。人気アイドル。
絶対にわたしの中に芽生えている「もの」には気付かれてはいけない。




それからまた撮影で忙しい日々が始まった。




朝から晩まで撮影でさすがに疲れた。




今朝もわたしのだいすきなメイクさんである「けんちゃん」に寝るなー！って怒られながら化粧をしてもらう始末…笑




わたしのだいすきなメイクさんのけんちゃん。
けんちゃんは男性だけど、感性は女性なの。




「あら〜Aちゃん珍しい肌荒れなんて！」




「忙しくてボロボロなのよ…けんちゃん、うまくごまかして笑」




「まかせて〜！あっ、しかもいつものピアスも片方だけ！」




玉森裕太の家に落としたせいでお気に入りのピアスが右耳にしかついてない。




「そう、落としちゃって。」




「え〜！大事なピアスでしょ！見つかったの？」




メイクしながら鏡越しにけんちゃんが尋ねてくる。




「うん、見つかったけどまだ手元になくて。
デビューしてからずっとつけてるからさみしいよ笑」




ピアスのついていない左耳をそっと触った。




わたしがいつもつけているピアスは、モデルになって初めての給料で買ったブランド物のピアス。
お守り代わりに肌身離さずつけてた。




「…ふ〜ん、ならいまあなたのピアスを持ってるのは誰〜！」




「へっ？とーもーだーち！」




「あたしの勘は当たるのよ！その男のこと好きなのね！」




にやにやしながらわたしの顔にメイクを施すけんちゃん。




わたしは動揺して目が泳ぐ。




「図星ね！どんな男なのよ！」




「好きなんかじゃないよ、それにロクでもない男！」




ほんっとにロクでもない男なのよ、好きになったら最後なんだから。




「ふふっ、知ってる？ロクでもない男に引っかかるように出来てるのよ」




けんちゃんが真面目な顔して言う。




「そういうものなの？」




「そうよ。Aちゃん気をつけなさいよ〜！
その男にあなたが傷つけられたりしたら、あたしが怒りにいくわ！」




「わかった、そのときはけんちゃんよろしくね」




けんちゃんが鏡越しにウィンクしてみせた。

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