【wrwrd!】あの、勘弁してください… (ページ1)

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1話全ての始まりページ1

街は戦火に燃やされていた。
昨日まではあんなに美しい街だったのに今はどこを見ても赤。
それが火の赤なのか血の赤なのか分からないけれど、ほんの数時間で見飽きてしまった赤はどこへ視線を向けても付いてくる。
そんな状況に涙が出てくる。

「(…っ何が魔女だ！お前達の方がよっぽど闇に染まっている！)」

そう、ここは魔女の街とも呼ばれる小さな街だった。
遥か昔ご先祖様が心優しくも難民を引き受けた、人間と魔法使いの共存した国だ。
だがいつしか魔法使いは魔女だと非難を受け、片隅にある小さな街へと追いやられ肩身の狭い思いをしていた。
そして今、いつか起こると思われていた『魔女狩り』という名の虐殺は、全ての魔女を殺すために仕組まれたものだ。
この国に……いや、この街で一番のご老体で強力な魔力を持っている大婆様は、さきほど目の前で亡くなられた。
大婆様は最後に、地下室にある薬品を全て処理するようにと告げた。
……私が逃げ遅れる事になるかもしれない事を計算に入れた上で、私に頼見込んでから亡くなられたのだ。

「(私は死のうが構わない……でも、大婆様と仲間達の努力の結晶のあの薬達だけは絶対に使わせない……！)」

散々忌み嫌い追いやったくせに、薬品だけは使えるものだと思っているあたり頭が緩い。
どんな病気や傷も治る薬だってある、失った記憶を取り戻す記憶もある、戦争に使えそうな劇薬だって。
でも、そんな都合のいい話はないと思い知らせてやらなければならない、それが街を焼かれた私達魔法使いのせめてもの抵抗だったのだ。
街を横断し、沢山の炎と沢山の遺体を見て、やっと目的地の建物に入り込んだ。

「(大丈夫……まだ誰も来ていない)」

一呼吸置いてから地下への階段を駆け下りる。
気配はない、火の手は回っていない、大丈夫だ。
とにかく、めちゃくちゃにしなければ。
すごく心苦しかった。
皆が作ったものを台無しにするなんて。
泣きながら、大婆様が作りかけていた容器に手を伸ばす。
……これは、普通の人間の子供が流行病にかかった時のためにと、沢山の時間と労力を掛けて作ってきたものだった。
そんな気も知らないで、馬鹿なやつらめ。
それを地面に叩き割った。