切り抜き 短編集

8P F ページ25

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ピッ



横「あ、見てたのに」

藤「映画見よう」



相変わらず、
渉とばかり会う俺ももう30代

今日も仕事終わり2人で宅呑み



横「もう癖だよね」

藤「何が？」

横「サッカー避けるの」



別にサッカー好きでもないくせに。

俺が勝手につけた映画に視線を送ったまま
嫌なとこをついてくる



藤「癖が治んないだけだから」

横「じゃあチャンネル戻していい？」

藤「……映画始まった」



渉は心配してくれてるだけだと分かってはいる
あれから誰とも付き合ってない俺を。



横「ミツ出てなかったよ」

藤「……今日どうしたんだよ」



いつも2人だけだとサッカーつけたり
名前だって出して来なかったくせに



横「連絡とってみろよ」

藤「何の用事もないのに？普通5年経ったら
番号だって変わってるだろ」

横「なんでもいーから話してこいよ」

藤「なんなの、気分悪いんだけど」



確かに別れてから、誰とも付き合ってない。
北山を見たくなくてサッカーも避けてる。

けど、それの何がいけないの



横「別れた日から何も変わらないから」



そう言われて返事の前に、目に入った
配置を無視して隅に置かれた使っていないソファ

北山が選んだ奴なのに、
引っ越しても捨てずに持ってきてしまった

君の居場所と願って買ったソファ


何年も、同じ見た目



横「太輔見てるの、もう辛いよ」

藤「時間が必要なんだよ」

横「5年経っただろ。もうさ、いい加減認めろよ」

藤「……」



何で今日、こんな話してくるんだよ

そうだよ
あの日からずっと辛いよ

俺から別れ話を出したんだから
北山がまた会ってくれるわけがない

あいつは別れたがってただろうし



横「会って、気持ちくらい伝えてこいよ」

藤「……どこにいるかも知らない」

横「昨日ニュースでみた」

藤「5年経ってるし…

横「日本代表として帰国するって」



日本代表……？

何だそれ



藤「凄いね、俺要らなかったんだな、やっぱり」

横「太輔！そんなの分かんないだろ！」

藤「いーよ分かんないままで」



人生順調な奴に元彼とか邪魔だろ
恋人が隣に立ってたら？

幸せそうに笑ってる君をみて俺も笑えるかな

俺は君に誇れることは何もないのに。



横「ミツ、５年前怪我して
サッカーやめかけたんだって」

藤「え……？5年前？」

横「別れたあたりだよ」



怪我？

夢を諦めかけるほどの？



横「言えないんだよ、ミツも。言葉で」

藤「……」



それでも



藤「…５年も前の話だよ」

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