切り抜き 短編集

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付き合って5年目

未だお互い仕事が忙しく
遠距離を続けてる



北「腹減ったな…」



お互いの誕生日もクリスマスも
正月も、記念日も電話で済まして

予定の空いた何でもない1週間に帰国した

１年ぶりの帰宅も藤ヶ谷は仕事で
俺は家でダラダラしながら留守番

まだ会えてない



自分で選んだ家具だけど

愛着も馴染みもなく
藤ヶ谷の匂いがするけれど

どこか居心地が悪い


……早く帰って来ないかな


お腹が空いたので
キッチンをぶらぶら探索



北「この家なんもな」



どうせ夜遅くまで帰って来れないって
言ってたし、何か食いに行こうかな

スマホをみても最近の履歴には
日本にいる人がいない

久しぶりに誘いたい人も特に思いつかない



北「つまんね…」



ジメジメしてる日本の夏は
何度経験しても慣れない

……夕方まで出るのやめよう


本か映画を観ようとソファから動かず
視線だけ本棚に移してみるも

気になるものもなく



北「は〜〜」



寝よう。

いつからか


恋にときめきとか求めないで
側にもいないで

ただ関係だけを維持していて


それが、

楽だと思うようになっていた





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藤「……た…ま、北山。ただいま」

北「ん…？」

藤「おかえり」



一度寝てしまえば時間はあっというまに過ぎて
目を開ければ、藤ヶ谷が微笑んだ



北「ん、ただいま、おかえり」

藤「何か食べた？」

北「いや」

藤「だと思って買ってきた。サラダと魚と…」



上着を脱ぎながらお弁当の説明してくれて
俺はまだ重たい瞼を擦りながら時計を見た



北「撮影長引いたんだな」

藤「うん、ちょっとね」



朝一から仕事して
全然疲れを見せないんだから藤ヶ谷は凄い



藤「ほら起きて、食べよ」

北「ん」



見せない、か

5年も付き合ってる恋人に
それはむしろ、おかしいのかもしれない


でも

気付かないふりをする



藤「明後日は休みだからどっかいく？」

北「いーよ、久々の休みだろ。家で過ごそう」

藤「うん」



藤ヶ谷も気付かないふりをしてくれるから


だらだら切れない長電話のようなこの関係を
必要、必要じゃないか

愛か、愛着か


何かをやめることが1番難しいから



藤「今日撮影で……」

北「まじ？いいな〜〜」



1週間に一度の電話と

1年ぶりの会話の内容は変わらず



藤ヶ谷が

俺を見つめる目も変わらず









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都合よく君といて



ごめん。

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