切り抜き 短編集

ずっと Ki ページ1

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落ちる、そう思った瞬間には
すでに地面に打ち付けられていた。

慣れないステージのせいでみんな練習すれば当たり前のように転けていたから、俺が落ちたところでいちいち駆け付けたりしない。

すぐに降りれる靴でもないし…
俺が起き上がるのを待つ視線を上から感じる

遠いな、なんて柄にもなく思うほど痛い。

ニカの大きい声は聞こえるけど
肩に走る激痛で返事も出来ないほど。

こんな痛い？ヘルメット被ってて良かった…
あーっ、いってー…くそっ



藤「北山、意識あったら右手あげて」



ステージの上にいたはずの声がすぐそこで聞こえた。

靴脱いで降りてきてくれたのか。
つーか、おせー…



藤「マネージャー、今いける病院の確認とれる？」



少しだけ右手を動かし聞こえた冷静な声に安心する。



横「とりあえず靴履き替えるよ」



横尾さんも来てくれて俺のローラーシューズを脱がしてくれるけど、肩が痛過ぎて体勢を変えれない。



藤「落ちるとき手伸ばしんてんじゃねーよ」

北「うっせ…っ」



確かに咄嗟に出た手。慌てて引っ込めたけど
時間もなく上手く転けれなかった。



藤「痛いの肩？」



ちょっと動くと激痛が走るから最小限頷いた



横「みっちゃん立てる？」



練習、DVDにとってんのに…くそ
こんな痛がってんの見せたくねー



藤「北山、支えるから立って」



肩を触らないように支えるため
正面から抱き締めるように藤ヶ谷の手が背中に回る



藤「痛い？いくよ？」

北「…っ」



格好は悪いけど補助もありちゃんと座れた
痛いのは肩だけか座ると幾分か楽な気がする



「北山さん、車回してきます。他の皆さんは練習に戻って頂いて…」

藤「俺もいく」

北「は？練しゅ……っ」

藤「本番完璧にしたら文句ないだろ」



なんなの、こいつ。普段会話だってないのに
1人で歩けるだろうに断り難くなってしまった



藤「ほら今度は立つよ」

北「……」



……嬉しいからとかじゃない



藤「…なんだよ」

北「！」



つい睨んでしまえば藤ヶ谷は真顔
俺その顔ちょっと嫌い



北「べつに」

藤「…貸しとか思ってねーから」

北「ん、分かってる」



あーあ、本当は昔みたいに
馬鹿みたいに笑いたいのにな



藤「……軽傷でよかった」



お。これは、ちょっと、嬉しい。



北「悪い。気をつける」



結局、病院で貰った診断は
肩の捻挫。

割と重症だった。



藤「本当気をつけて」

北「ハイ。すみません」

気が付く度 F→

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