ゆるやかな坂 (ページ6)

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藤「…なんか、…面白くねー…」

北山は合コンを女の子と2人で抜けた
それはつまりそういうことで

あー、やっぱ興味ないわけじゃないのか

とか１人家に帰って考えていた。

藤「先寝るか……ん？」

ヴヴー、ヴヴッ、ヴヴーッ

ズボンのポケットに入れていた
スマホのバイブ機能の振動が響く

画面を見れば北山からの着信

藤「…？」

なんでこんな時間に？
まだ11時台だけど…

藤「もしもし…」

北『………えき』

藤「は？」

北『駅にいる』

ぶっきら棒な言い方からして
酔ってるな…

合コンですでに結構回ってたのに
まさか、さらに飲んで解散？

健全なのか何なのか…

北『はやく』

藤「…はいはい。行くから寝るなよ」

北山からの電話が切れ、上着を羽織る
駅まで5分だけど、心配で少し急いだ。

住宅街は夜になると街灯も消え
静かで少し寂しくなるから嫌いだ

多分、北山も。

藤「いた…」

少し遠くから明るい駅の中
ベンチに座っている北山を見つけた

近付くと北山が大分酔っ払っているのが分かった

藤「北山、迎え来たよ」

北「…ぃ…すけぇ…」

藤「うわっ、おい…大丈夫かよ」

北山は弱々しく俺に抱きついた

藤「なんか、あった？」

北「…べつに」

藤「………帰ろ」

強がりな北山は
酔っ払っていても素直に甘えない

分かってる

北山の肩に腕を回して
反対側の手で北山の荷物を持つ

北「……明日休む」

藤「午後からでも来いよ」

北「…んー……」

嫌なことも辛いことも言わないで１人で抱え込む
北山はそーゆー奴。

藤「女の子は？」

北「…帰った」

藤「1人で？」

北「彼氏が迎えに来たよ」

合コンなのに彼氏持ちか、すごいな…
てか、それで北山は沈んでんの？

そんな寂しそうな声出すの…？

北山は、潰れるまで酒飲むくらい
マイコさんのこと、気になってたのかな…

北「……藤ヶ谷」

藤「ん？」

北「…吐きそう」

…いや、高まった欲を消すために
飲みまくっただけかも

藤「家まで我慢出来ない？」

北「…してみる。……ムリ」

藤「…うぉいっっ」

秒で終わった北山の戦いは
俺のお気に入りの上着の犠牲を残した

藤「……」

北「……」

朝、酔いがさめた北山が
コートをクリーニングに出しに行ったのは

言うまでもない。

北「…ごめんなさい」

藤「しばらく一人呑みすんなよ」

北「はい…」

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