こえのひと (ページ9)

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☆8☆ ページ9

「…お待たせ」

「あ、鈴木さんお疲れ様です
病院予約してあるのでこれから行きますけど
体調はどうですか？」

「んー…急に動かない限り吐き気はないけど
頭がちょっとだけぼーっとする」

「そうですか…」

俺の返答を聞いて困ったように眉を下げる北沢がチラリとこちらを見て

「渡したやつ飲んでます？」

「うん、飲んでる」

あのおいしくないやつ

「まぁ、詳しいことは病院に行けば分かると思いますので…」

北沢が後部座席のドアを開け、俺が乗ったのを確認すると運転席に乗り込んだ

(あ、綺麗になってる)

匂いも残ってないし…

…苦労かけちまったな

.

.

.

忙しい時期と比べたらなんてことないくらいなのに身体がだるくて仕方がない

こっからだとだいぶかかるし
体力温存のためにも少し寝るか…

「…………ｽｩ」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

遠いところでドアを開ける音が聞こえる

起こされるかな…

ﾀｯﾀｯﾀｯ…

あれ？遠ざかっていった

「…きたざわ？」

目を開けて運転席のほうを見るが北沢の姿はない

「あれ…？」

ここは？

カーテンの隙間から外を覗くと
かかりつけの病院の駐車場だった

ｶﾁｬ

シートベルトを外し、ぼーっとしていると北沢が戻ってきた

「あ、鈴木さん起きました？
受付してきたので行きましょう」

「……うん
ねぇ、きたざわ…」

「…？どうされました？」

「…吐きそ…っぐぅ…」

「あっ、ここに」

北沢が袋を広げて口元にあてがってくれた

「…んっごほっ…ぅえっ」

吐き気はあるのに何も出てこない

「ごほごほっ…！ﾋｸｯ…っえ！」

苦しくて苦しくて涙が溢れてくる

「ぅぐ…っげぇっっ」

「鈴木さん、背中乗ってください」

これ咥えててもらって大丈夫なので

と渡されたタオルを口元に当てて言われたとおりにする

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

病院の待合に行くと俺の名前が呼ばれていた

そのまま診察室に入ると、先生が少し焦った顔で顔に触れてくる

背中から降りて丸椅子に腰をかけるが
どうも視界がぼやけて妙な感じだな

「…脱水を起こしかけてるね
あとで点滴しようか」

症状は？という問いかけにはすべて北沢がこたえた

先生はうーん…と唸ったあと
俺のお腹をぐっと押した

「…ｯﾂ‼‼」

あまりの激痛に顔を歪めると

やっぱりという顔をして

「ノロだね」

と一言