∞闇月夜会∞《Dye D 》 (ページ14)

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冷たい手が、頬に優しく触れて

心地良さに、ゆっくり目を開けた。

目の前に綺麗な横山さんの顔、驚いて後ろに下がりそうになって

引き寄せられて、おでこ同士がくっついた。

真っ直ぐ見つめられて、

『熱はないみたいですね。でも…心配や…』

私を優しく抱きしめると、

『ディナーは、お部屋に運ぶことにして。気分を落ち着かせるのに、少し夜風にあたりに行きませんか?』

ドキドキしながら、私は頷いた。

ゆっくり私から離れると、

『そこに座って、待っててもらって良いですか?シェフに伝えてきます。』

『すみません。ありがとうございます。』

優しく微笑むと、足早に横山さんは居なくなった。

椅子に座って、漸く落ち着いた。

横山さんの綺麗な顔に、紳士的な振る舞いに

胸の高鳴りが凄かった。

窓の事は、気のせいだと思う事にした。

少しして、横山さんが私の所に来てくれて

『後で、Aさんがお食事できる時に、出してもらうように頼んできましたから。』

『わざわざ、ありがとうございます。』

ニコッとされて

『さあ、参りましょう。』

横山さんが腕を出してきたから、そっと腕を組んだ。

やさしく寄り添いながら、歩き出した。

外に出ると、夜風が気持ち良かった。

見上げると、綺麗な上弦の月。久しぶりに見たと、嬉しく思ってると

『Aさん、月好きなんですか?』

『はい。好きです。』

『やっぱり、変わってないな…。月をよく見てた…』

横山さんが、小さな声で呟いたから。よく聞こえてなくて

『ごめんなさい。今、なんて…。』

言ってる途中で、ぎゅっと抱きしめられて。驚いて、横山さんを見ると

月の光でより一層、綺麗だった。見惚れそうになってると

『Aさんが、月が好きって聞いて。嬉しくて♪俺も好きやから…』

『船に乗って見る月は、陸と違って格別なんです。ほら、海にキラキラと映ってるでしょ。』

海を見ると波がゆれてるから、キラキラと綺麗だった。

じっと見つめてると、

『Aさん。』

『はい。』

横山さんに目線を移すと、優しく微笑まれて

『今日、Aさんに逢えて良かったです。貴方は、俺の運命の人やから…』

『えっ、運命…?』

『すみません、支配人。マジックショーが始まるんで!!』

少し離れた場所のドアが開いて、船員さんが大きな声で叫んだ。