episode３４ ページ36
「だから、ほとぼりが冷めるまではシフトは入れられないの。理解してくれるとうれしい」
「……わかりました」
正直一切納得いかない。
私が悪いというのは分かるけれど、でもそれをお店に苦情として入れるのは違うと思う。
店側に迷惑だし、害悪オタクとなんら変わらない。
一番驚いたのは、私がKnightsや泉くんのファンに認知されていたことだ。
そこまで目立つ格好をしたり行動をした覚えはないけれど、「チェックメイト」のときから通い始めてほとんどの現場に通っていたから、自然と覚えられていたのだろうか。
「じゃあ、お給仕は今日で終わりでしばらくはないから。最後まで頼むわよ。──Aちゃん、リピ多いしお客さんには人気なんだから」
お店に来たこともないような向こう側のファンが、一方的に文句を言って攻撃してくる。
そんな状況に嫌気がさしたけれど、店長の言葉で少しだけ心が軽くなった。
「おかえりなさいませ、ご主人様っ。……ぇ」
玄関でお客さんの入店を待っていた私は、満を持して入ってきたご主人様にいつものように挨拶をした。
が、まさかの人物の登場に思わず驚きの声を出してしまった。
「ただいま。A」
眩しいくらいにきれいな、泉くんだった。
タイミングがタイミングだったので一瞬涙が出そうになったけれどぐっとこらえる。
神様が、償いのチャンスを与えてくれたのかもしれない。
そう、思った。
「お席まで案内しますね……！」
ばくばく脈打つ心臓の音がうるさい。
きっと顔は真っ赤で、視界は泳いでいて、前のときみたいに顔に出さない努力はしたけれど、うまくはいっていない気がする。
タイムリーだ。
頭が追い付かない。
「今日お話しするメイドさんを指名してもらえますか〜？」
平常心、平常心。
心の中で何度も唱える。
泉くんはというと、メイドの一覧が載ったメニューを眺める姿さえ、この上ないくらいにかっこいい。
「俺、Aと話したくて来たんだけど」
「──！？ ……っ、ありがとうございますご主人様っ！ ごご、ご指名いただき光栄です！」
不意打ち過ぎる。
まっすぐ見つめられて、脳が情報過多でバグを起こしてしまいそうだ。
さらさらで、でもしっかりセットした髪の毛に、美しい素材をしっかり活かしたメイクで何よりなきれいな顔で、ぴんと伸びた背筋がスタイルのよさを強調していて。
ああ、泉くんだ。と思う。
そんな泉くんが、私に会いに来てくれるなんて。
最上級の幸せと、同時に押し寄せる罪悪感を、ひしりとかみしめた。
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咲愛(プロフ) - ﾂｷさん» コメントありがとうございます！始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです！続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします！ (2023年2月22日 16時) (
レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ﾂｷ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます！毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました！続き楽しみに待ってます！ (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲愛 | 作成日時：2023年1月27日 12時
