episode18 ページ20
ものすごく動揺する心を必死に抑えて、私は笑みを浮かべて答えた。
「久しぶりですね、瀬名さん」
まさか泉くんを瀬名さんと呼ぶ日が来るとは。
そもそもプライベートの泉くんに会える日が来るなんて。
「ちょっとちょっと、そこの二人どういう関係なの???」
焦ったような羽風さん。
なずなくんも「おれも気になる〜」と言った。
私が口ごもっていると、泉くんが答える。
「仕事で一緒になったことがあって、それ以来だけど……」
ふいっと全員からの視線を避けた。
「そんなことどうだっていいでしょ〜。早く食べるんだったら注文してよねかおくん」
「はいはい。あ、なずなくんたちよかったらあとで相席させてよー、混んできちゃって席とれないかもなんだよね」
「かおくんの動きが遅いから」
「せなっち静かに」
「おれはいいけど……」
ちらっとなずなくんが私を見た。
「あ、仁兎くん、私も大丈夫だよ」
「え〜Aちゃんありがとううれしいすぐ買ってくるね」
ばちっとウインクを決めて泉くんを引っ張ってカウンターに向かった羽風さん。
「A、仕事で泉ちんと一緒だったってどういうことだ?」
また二人だけになった時、なずなくんが言った。
確かにファンを名乗っているのに仕事……? と疑問に思われても仕方がない。
「実は、」
自分がメイドカフェで働いていること、そこにKnightsが仕事で来たこと。
私がファンだということは、泉くんは知らないこと。
全部話した。
「そうだったのか」
なんか、すごいな、となずなくん。
ごもっともだ。
「──泉ちんに、自分がファンだってこと言う予定は?」
「ないよ」
即答した。
ファンだと知られてしまったら、twitterで繋がれたことも幻になってしまいそうだ。
泉くんを困らせたくないとか、そんなんじゃなくて。
ただの、自分本位の理由。
「そうか。だったら、絶対にバレちゃだめだぞ」
「わかってるよ」
「嘘も方便ってやつだなー、おれも協力するから」
ありがとう、と返したが、"嘘も方便"という言葉がぐさっと刺さる。
そうか、私は泉くんに嘘をついてるんだ。
大好きな泉くんに。
きゅっと胸が痛んだ。
「おまたせ〜」
羽風さんと泉くんが戻ってきて、テーブルを四人で囲む。
私のななめ前になずなくん、左隣には泉くん、お向かいに羽風さんという配置になった。
「瀬名さんのアイスクリーム、色が瀬名さんっぽいですね」
「別に俺のイメカラに寄せたりなんてことはしてないから。たまたまおいしそうなの選んだだけ」
すっかりタメになっていて、ああ、本当にプライベートの泉くんと話せているんだ、と幸せな気持ちに浸れた。
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咲愛(プロフ) - ツキさん» コメントありがとうございます!始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです!続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします! (2023年2月22日 16時) (レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ツキ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます!毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました!続き楽しみに待ってます! (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲愛 | 作成日時:2023年1月27日 12時