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乗客の入れ替わりでひとつだけぽっかり
空いた席に知念が当然の如く座る。
俺は、その前に立ち少し無理をしてつり
革を掴んだ。


「でも、いのちゃんも馬鹿だね。
売れっ子なんだから、そんな質の悪い
奴相手にしなきゃいいのに。

…酷くされるのが好きなのかな? 」


こてんと小首を傾げる知念の可愛らしい口か
ら飛び出すには、おおよそ似つかわしく無い
言葉の羅列。

「あぁ…でも綺麗なものを傷付けたくなる
気持ちは分からなくもないかな。

真っ白な肌に真っ赤なしるしとか。」



知念と出会ったのは、中学に入学した時。
以来クラスもずっと一緒の腐れ縁だ。
当時の知念は今以上に幼くて、男子校にあり
ながら可憐な少女が舞い降りたかの様な異彩
を放っていた。
俺もまた天使の再来等ともてはやされ、貼り
付けたような笑顔でそんな役割を受け入れて
いた。


「涼介って、本当は笑ってないでしょ?」


取り巻きが消えた放課後、ぼんやりと空を
眺めていた俺に知念が声を掛けてきた。
二人きりで話したのは初めてだったが、やっ
ぱり知念にはバレていたのかと納得した。


「……知念のも嘘笑いだよね。」


父親の乱れた女関係を目の当たりにしてきた
俺は穢らわしい大人のそれらを知っていたか
ら、天使になんてなれる訳が無い。
知念もまた、家業ゆえに幼い頃から特異な環
境に身を置く“同士“だった。
否応なしに引き上げられた価値観が俺達を
大人にし、嘘つきした。

知念といる時だけは正直な俺に戻れる。


いのちゃんと暮らし始めたことも知念にだけ
は打ち明けることが出来た。
突拍子もない親友の告白をあっさりと受け入
れた知念は、“ 良かったね ” と笑った。

真っ暗な階段、いのちゃんの夜の仕事、軋む
天井、俺の不条理な嫉妬の訳…知念だけがそ
の全てを知っている。

いのちゃんに固執しながら、知念もまた俺に
とっては間違いなく必要不可欠な要素だった。

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設定タグ:Hey!Say!JUMP , BL   
作品ジャンル:恋愛
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀`)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん!ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした!この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…(笑)素敵なお話ありがとうございました! (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀`)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな?なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です!また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぴよ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年8月30日 20時

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