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指先で触れると簡単に溶けてしまう
名ばかりの初雪が降った冬の夜。
いのちゃんは、“夜の仕事“を辞めた。
薮ちゃんは、随分手を回してくれたのだが、
売れっ子のいのちゃんが全てを精算するには
ふた月近くの時間が掛かった。
俺は、その時をただ静かに待った。
ギシギシ軋む天井からも目を背けなかった。
春の訪れを告げたのは、知念にサクラ咲いた
との知らせから。
見事現役で薬学部に合格した知念は、胸も張
らずに当然だと言い放ち、涙する父親に合格
証を手渡した。
覚悟を決めた知念は、まさに無敵だった。
「ただいま。はい、これ。」
慣れないスーツ姿でのお遣いを終えた俺は、
預かった封筒をそのまま手渡す。
説明を受けても正直よく分からなかったのだが、
得意の営業スマイルに先方は終始満足気だった。
「おかえり。ご苦労様。」
窓際のデスクに向かういのちゃんは、封筒を
受け取ってにっこり微笑む。
“昼の仕事“だけになった今も、相変わらずに
売れっ子で忙しい日々を送っている。
俺は、高校卒業後いのちゃんの仕事を手伝い
始めた。
今はまだ大した役にもたたないけれど、この
顔は営業面では随分と戦力になるらしい。
薮ちゃんが笑いながら励ましてくれた。
「ちょっと休憩しようか。」
いのちゃんのお誘いに、俺は香りの良いコー
ヒーを淹れた。
窓際に並んでお揃いのカップを口に運ぶ。
「……ねぇ、あの人生きてるんだって。」
いのちゃんは、世間話でもするかの様にさらり
とそんな事を言った。
「気になって、薮に調べて貰ったの。
西の方でまたあやしい商売してるみたい。
あの人、顔は抜群に良いからどんな世界
でも上手く生きていけるんだよね。」
……生きてたんだ、と
悔しいけれどホッとした。
「今更、返してとか言われても困るし。
俺もう、涼介無しじゃ生きていけない
んだから。」
いのちゃんがプクッとリスみたいに頬を膨ら
ませ、俺の腕に身体をすり寄せてくる。
知ってるくせに。
「…教えてくれて、ありがと。
あんな奴でも同じ血が流れてるから、
生きてるならその方が良いし。
でもね、
俺だって、いのちゃんがいないと
もう生きていけないよ… 」
知ってるけど、何度だって伝える。
何度もキスして、抱き合って、
ひとつなって、変わらない想いを紡ぐ。
…
…
…
ろくでもない夜が明けて
俺たちは、本当の愛を知る
完
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ぴよ(プロフ) - あいとさん» あいとさん、ありがとうございます( ´∀｀)凄く久しぶりに二人に想いを馳せてみました。私もここ迄辿り着く過程を思うと万感の思いです。幸せに過ごしてほしいなぁ♪ (2018年6月25日 12時) (
レス) id: 20d979f9fd (このIDを非表示/違反報告)
あいと(プロフ) - ぴよさん！ろくでもない夜にファンの私にはとても嬉しいお話でした！この日までよく頑張ったね二人…、いのちゃんこれからは大好きな人にだけ甘やかしてもらうんだよ…となぜか親心…（笑）素敵なお話ありがとうございました！ (2018年6月24日 7時) (レス) id: 6689a85a28 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - にゃーごさん» にゃーごさんこちらにもありがとうごさいます。このお話は当然完璧なフィクションなのですが、その中でも心の動きがなるべく自然に繋がる様にそれぞれの気持ちを想像して書きました。同じ様に感じて貰えて嬉しいです( ´∀｀)妄想は最高ですね 笑 (2017年4月28日 22時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーご - ぴよさん こんにちは。私がぴよさんに夢中になった作品は実はこの作品でした。あの子は実はこんな気持ちじゃないかな？なんて妄想が広がった時に胸にトンと降りてきてもう、ぴよさんワースドから抜け出せません。 (2017年4月28日 9時) (レス) id: a963f855a1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - 綺更さん» コメありがとうごさいます。最後まで読んで下さってとても嬉しいです。私も書きながらもどかしく、皆を幸せにしてあげれるのか不安になったりもしたのですが、無事完結出来てホッとしています。涙ぐんで頂けたの事で感激です！また面白いお話をお届け出来る様頑張ります (2017年1月14日 3時) (レス) id: 515f116419 (このIDを非表示/違反報告)
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