33話 ページ34
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正直、Aにどう接したらいいのかわかんねぇ。
気まずいし、何話したらいいのか全くわからない。
Aと同じ空間にいるのが居たたまれなくなって、編集すると言って部屋に逃げ込んだ。こもったはいいが、逆に落ち着かなくなってしまって、パソコンもつけないまま結局部屋を出たってわけだ。
リビングに行ったらソファの上で丸まって座ってるAがいて、その背中がやけに寂しそうに見えたから、つい声をかけてしまった。
…最初見た時から思ってたけど、Aを見てるとなんか落ち着かねぇんだよな。
Sh「あ゛ッ」
考え事してたらミスって敵の攻撃に当たってしまった。赤帽子のおっさんが情けない効果音とともに落ちていった。
リスタートしようとする画面から目を離して、俺の横でスヤスヤと眠るAを見る。
細い肩が小さく上下し、規則正しい呼吸を繰り返している。日が照らす肌はなめらかで綺麗だが、少し血色が悪いように見える。
…そういえば、昨日も今日もメシあんまり食ってねぇよな。きりやんがマズいのかなぁって珍しく不安がってたな。
Sh「……、…うぉっ?!」
ボーッと見ていたら、小さな頭がガクッと下がった。
その衝撃で起きたのか、Aはゆっくりと頭をあげて重たそうな瞼を開いた。
『…ぅ、んん、』
Sh「眠いならまだ寝てれば?Broooockまだ帰ってこねぇし。腹減ったんなら飯食うか?」
Aは目を擦りながら首をふるふると小さく振った。だろうな、とは思った。
『すこし、ねます……』
Sh「どーぞ」
寝ぼけた声でそう言ったあと、俺と反対側に体を倒して、膝を抱えて小さく丸まった体勢で寝た。その姿は外敵から身を守ろうとする小動物のように見えた。
あ、寝るならBroooockの部屋いけって言うべきだったか?…まぁ、もういいか。目が届くところにいたほうが逆に安心するか。
ソファの脇に落ちていたブランケットを見つけて、小さな体を包みこむように掛けてやる。
『…、ぁぃがと…』
Sh「っ!お、おぉ…」
ふにゃふにゃと舌足らずに礼を呟いた彼女は、再び小さく寝息を立て始めた。
その微かな呼吸音を聞きながら、再びコントローラーを手に取った。
柔らかな日差しが部屋全体を包み込む。よくわかんないヤツと二人きりの空間。まだ気まずさはあるし、穏やかとも、心地が良いとも言えないが……そんなに悪くもなかった。
気持ちよさそうな寝息と、少し控えめな操作音が響く中、静かに時が流れていった。
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作者名:おやすみこ | 作成日時:2021年12月1日 0時