氷砂糖16つ ページ17
零夜の話を聞いていたら、いつの間にか昼食の時間になっていた。
零夜が食堂まで案内してくれると言った。
「君は方向音痴だからね」
......別の世界線とやらの私も、大したことないみたいだね。
他愛もない話をしているうちに食堂まで着いてしまった。
彼といると時間があっという間に感じる。
「......あ、兄さん！」
「ああ、A」
もうすでに何名かが疎らに席についていて、私は兄さんを見つけるなり駆け寄る。
おや、というように他の人もこちらを見る。
まだ時間が早かったらしく、まだ食事は出てきていなかった。
「おー、アダムの妹か！俺は十文字アタリ。よろしくな！」
「A＝ユーリエフと申します。こちらこ......」
......あれ？
「あ、あの！今なんて！？」
「へ！？じゅ、十文字......」
「そこじゃなくて！！！その前！」
「え......アダムの妹か、って......」
......
......女として見てもらえてる......
私は膝から崩れ落ちてしまう。
「え、ちょ！？おい、A大丈夫か！？」
「どうしたんだい君......」
アタリと零夜に支えられて立ち上がることができた。自立できなかったので兄さんに座らせてもらう。
「......あ、お前もしかしてリリカが男って間違えてたから、俺も間違えるのかと思ったのか?」
図星だ。
「なあんだ、それでか......こんだけ美人なんだから、男の俺が間違える訳ないだろ？」
......え。
私が......美人？
「アタリさんわかりますかAの美しさが......さすがは私の妹ですよね」
兄さんが食いつくようにアタリに言う。
な、なんか怖いよ兄さん。
それにさらっと自画自賛したよね今。
「......Aは綺麗だと思うよ」
「零夜さんまで......なにを言うのですか皆さん......冗談はよしてくださいよ」
誉められるのは嬉しいが、お世辞に慣れてしまい純粋に喜べない。
どうせみんな空気を読んでだろう。
......そう思っていたが。
「......君は僕のことを綺麗だって言ったけど......僕が今まで見たものの中では、君が一番綺麗だよ」
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作者名：夜蒼空 | 作成日時：2020年3月29日 14時
