彼の空は青かった part3【アルスマグナ】【泉奏】

125曲目　泉side ページ32

桜さんに引っ張られる腕を必死に引き戻す

男性相手だったら手加減なく引けるのだが、仮にも彼女は女性

力任せに引き戻す事は出来なかった

仕方ないため、彼女が諦めてくれることを祈ったが
その考えは儚く散る

桜「奏君ってばぁ！」

奏「いや、ですから…！」

引き問答に押し問答

会話は噛み合わず、終わることがないことを指していた

もうすぐで学園祭二日目が開催される時刻

着替えたり、セットや準備などやることは山ほどあるのに
何も手伝えなかった

昨日は袴を着ていて暑かったので、今日は涼しいといい

なんて考えていればセミよりもうるさい、耳をつんざくような音

裕「あのっ！！」

俺も桜さんも動きがカチリと止まった

どうやら俺らだけじゃなく
近くのクラスの生徒も顔を覗かせ、様子を伺っているみたいだ

言ってしまえば失礼だが
あの華奢な体からあのような、大きな声がでるとは思いもしなかった

廊下中に広がる声は嫌でも耳に入ってくる

裕「そんなに良く思ってくれるのなら、『中尾君』なんて他人行儀な呼び方しないでください！」

Aさんの言葉はここからでは遠くて見えないが
彼女も彼の声に驚いているようだった

それにしても


中尾さん、遠回りに
「下の名前で呼んでくれ」と言っている様なものですよ？

もしかしたらですが彼も、Aさんを…

そこまで考えて思考がストップする

それを今考えてどうするんだ

彼が先に立つなら、俺はその先へ立てばいい

中尾さん

いや、もう裕太で良いでしょうか

裕太とは気が合いそうです

ですが、Aさんに関しては敵…となりますね

生徒会室へと駆ける裕太からは、音が聞こえなかった

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