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# 情景 ページ40

電車に乗り、故郷を離れた
肉親なんかは放っておいて
自分の幸せを掴みにいった
行く先はもちろん


「…こんな町…」


騒がしい声。女々しい。
鈍い音。僕の頬から出た音だ。
皮膚に残るジンとした熱。


「…俺の方から願い下げだ…」


兄は止めた。
俺が出ていくというのを知っていた。
だからこそ僕を引き止めた
兄達はあと何年かしたら共にここを離れようと約束をした


だけど…二人は俺を置いて渋谷へ向かった。
何が新しい出会いだ

俺はそれからの何年間。
ずっと父からの暴行を受け続けた。
たった一人で

兄は…俺のいくつか上の兄は、懲りずに僕宛てに手紙を送った。

いつか迎えに行く…と、今は来るべきでは無い と

どうでもよかった

向こうの様子なんか、教えられても


「…だったら…こんな町…」



こっちから消えてやる



そして僕は午後十六時半の電車に乗り、渋谷へと向かったが

着いた途端目が点になった


瓦礫、汚い風景だった。
所々で視線を感じた


「…こんな…嘘…兄さん達は…」



幸い渋谷は復興が早かったのか、元通りだった。

病院なんて腐るほどある
その中から探し出すなんて、面倒だし…それになんで今になって兄達を心配するのか。


本心だからだろう



「……僕…一文無しだよ…」




そんな時、あいつらに出会い、いいカモにされた訳だ

人を何人も殺したのだという

殺戮兵器だ

奴らの手の中、自由に弄ばれていた。

ヒプノシスマイクのスキル…パワー…スピーカー…頭の回転の速さ、何もかも人より勝っていた。

人より

だが…


改造だ

その日が来た


思えば記憶もなかった


忘れたくない者も…全て、遠く彼方へ飛ばされてしまったのだ


それで良かったのかもしれない、あんな奴らのこと…僕を置いて逃げた奴らのことも…忘れられるなら




「………兄さん…」



今でも、僕の目蓋に映るのはあの日


必死に引き止めてくれた兄たちの顔だ


「…今日も……見つけれなかった…」



飴村乱数


僕の救世主だ。


掬ってくれた、こんなゴミ山みたいな思い出ばかりの日々から


彼は既製品で、変異体になるには時間もかからなかったのだと

彼は感情の素晴らしさを、仲間と嬉しさを分かち合う幸せを教えてくれた


でも、途切れてしまったものはもう取り返せないのだと言う。


「……僕に着いてきて!」



見せられたのは星空だ

胸が踊った。

初めての感情だった





「愛しさまでも感じない?』



彼はそう言った

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(プロフ) - 更新頑張ってください!更新されるの待ってますね(^^)v (2020年3月16日 14時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:幻路 | 作成日時:2020年3月16日 11時

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