【１期】弱虫姫★番外編【弱虫ペダル】

【文化祭編】キャットハント ２２ ページ29

詰んだと思ったのは間違いではなかった･･･。

結局あの後、私は女の子２人に体育用具倉庫の入り口から中へ突き飛ばされてしまった。


膝を擦り剥いてすぐに立ち上がれなくて、次の瞬間には扉が無情にもガシャンと音を立てて閉められる。

慌てて開こうにも何か扉につっかえ棒を置かれたらしくてガタガタと扉は不安定に揺れるだけ。




「どうしよう･･･」




指先が痛くなってきたところでやっと私の力ではつっかえ棒は何とも出来ないと思って扉から手を離してポツリと呟いた。

殴られたり、水をかけられたり、物を壊されたりしたわけじゃない。


ただ閉じ込められた際に膝を擦り剥いただけだという『いじめ』にしてはマシな部類だったことにはホッとした。

だけど今はもうキャットハントのイベントは開催していて、このままではクラスのみんなに迷惑がかかっちゃう。


携帯は部室に置いてきてしまったし、ここは人が来ないから大声だしても届かない。


用具が太陽の光で劣化しないようにと作られた倉庫は窓が無くて真っ暗で、唯一扉の隙間から糸のように細い光しか入ってこない場所。


怖い･･･どうしたらいいんだろう･･･。


子供と思われていた時は慈愛に溢れていた女の子たちが、同じ年代だと知った時、突然恐ろしい悪意が顔を出す。

どこに行ってもやっぱり私は嫌われてしまう。




「先輩････。みんな･･･」




浮かんでくるのは自転車競技部のみんなの顔ばかり。

私はどれだけあの優しい人たちに依存しているんだろう。



あの優しさに。

あの温もりに。

あの微笑みに。




金城先輩、田所先輩、巻島先輩････。

手嶋先輩、青八木先輩、古賀先輩････。

今泉くん、鳴子くん、小野田くん、杉元くん････。



次々とみんなの顔が浮かんでくる。

今までこんな状況に陥った時、両親の顔しか浮かばなかった。


でも今は、こんなにもたくさんの顔が浮かんでくる。

大切な人がたくさん増えた。


私は独りなんかじゃない。

いつも心配してくれて、泣いている私の涙を拭いてくれて、大丈夫だって優しく微笑んでくれるみんなが･･･。


そう思うと、ほんの少し心細さが消えていく。

涙を手の甲で拭って膝を抱えると、擦り剥いた膝がピリリと痛んだ。



午後に差し掛かった頃、キャットハントの参加者たちが午前の２部共に対象の女の子が見つからないという報告が開催される教室に届いていた。

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