君の色をもっと。

韓紅 <からくれない> ページ5

なんとかドアにしがみつけた私の左手。
でもやっぱり体はそれだけでは支えられない。にも関わらず、重力に反していて。
私のではない腕が、後ろから私の体に回されてる。


「っぶねぇ、」


低くて小さな声が耳元で響いてぞわっとする。
……伊沢さんが後ろから、私の体を支えてくれていた。

いい匂いする………
ていうか、なんか体ごついな、やっぱ女子とは違うな、、
それに私の左手の上に、伊沢さんの手がおかれてる。
手大きいんだな……


何が起こっているのかいまいち理解できなくて、感じたことをそのまま頭の中でつぶやく。


『って、うわ！！！す、すみません！！！！！』


状況をようやく理解して、ぶわっと体が熱くなる。
私、今、後ろから抱きかかえられて、、？？

近いなんてもんじゃない。

背中と左手と顔が、熱い。


「大丈夫ですか、ってすいません、さわっちゃって……」

『いや、全然、ちが、あ、その、大丈夫です！！！』

私史上こんなにテンパったことあるか？ってくらいテンパってる。

そして急いで離れる。こんなん心臓もたないから！！！しぬよ！！！


何となく気まずい雰囲気。微妙に遠い距離をとる。さっきまでの明るさはどこへやら。


……というか、こんな時にもちゃんとセクハラになってないかとか気にする辺り、流石すぎるというかなんというか。

体はまだ熱い。
冷めるどころか、全身に熱が広がっていってる気がする。っあつい……！

ていうか、重くなかったかな！？重かったよね！！うわーーーーっ


色々ごちゃごちゃ考えてるうちに、伊沢さんとの間に沈黙があることに気付く。
なんか、喋らなければ、え、でも、なにを？？？


すると、音楽が放送で流れてきた。

「〜♪
学祭実行委員です。皆さん、今日はお疲れ様でした！学祭は楽しんでいただけたでしょうか？……」

止まっていた時間が動き出す。

「……あ、じゃあ、僕この辺で……。
あの、なんかすみませんっした。」

『えっいえ、むしろ、いろいろ助けていただいて……。こっちこそすみません。
っありがとうございました！！』




なんとかお礼を言えた。

伊沢さんが先に歩いていく。

その姿を見ることしか私には今出来ない。



熱はまだひかないようだ。

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