毘売 ページ23
.
とっぷりと日が落ち、この町に下りてから二回目の夜を迎える。
何もなければぐっすりと眠っているはずのこの時間、私は月明かりに照らされた公園のベンチに座っていた。
控えめに吹く夜風を感じながら目を閉じて、今日のことを振り返る。
今日の昼、善逸と二人でもう一度あの甘味処を訪れた。
薄暗い店内では明るい笑顔を振りまく毘売さんが接客をしていて、私達に気づいた彼女はすぐにこっちに付きっきりになった。
『すみません、お手洗いお借りできますか?』
甘味の説明をしてくれていた毘売さんに断りを入れてお手洗いに行ったのだが、帰ってくると善逸の様子が少しおかしかった。
甘味を食べているときもそわそわと落ち着かない善逸。
不思議に思って店を出た後に何かあったのか聞くと
『ひ、毘売さんに夜呼び出されちゃって…。ど、どどどどうしよう…ッ!』
殺される!?俺今日殺される!?と泣きわめく善逸に、私はにっこりと笑った。
『なんだ丁度いいじゃん。殺ってやろうよ』
いや駄目絶対だめだから!!と叫びまくる善逸をなだめて一人にさせたのである。
とはいえ私も鬼じゃない。
一人で泣きそうな善逸を見ていてもたってもいられず、外に飛び出して彼の無事を祈っているのだ。今ここ。
「……あれぇ?」
目を開くと、公園の入り口に毘売さんが立っていた。
「おかしいなぁ、アタシは善逸くんを呼び出したはずなんだけど」
「あは、知ってます。でも善逸は宿屋に一人で残ってますよ」
いや本当に苦労した。
私が善逸の代わりに一人で行くって言ったら、ものすごい勢いで「いや駄目絶対だめだから!」て叫ぶんだもん。
毘売さんの血鬼術の都合上、善逸が行くよりも私が行って相手にした方が絶対にいい。
それでも泣きそうな善逸を見てられなくて、早い時間から飛び出してきてしまった。
戦力外通告じみたことを言っちゃったからかな…。
そんなつもりはなかったんだけど。
「でも、毘売さんの目的は私でしょ?」
「そうよ。貴方の血は稀血の中でも最上級の血…。喰わない手はないわ」
私がベンチから立ち上がると、毘売さんはゆっくりと近づいてきた。
「でもね、困ったことにアタシは攻撃特化の鬼じゃないの」
177人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
hinata20070219(プロフ) - 私も善逸とむいくんが推しなんです! (2020年5月12日 3時) (レス) id: feb521b802 (このIDを非表示/違反報告)
ひにゃたこ - Alice@夜未さん» 続編?!凄いですね!読むのが楽しみです(*^-^*)いつもいつも素晴らしい作品をありがとうございます(≧∇≦)夜未さんもこの小説も大大大好きですッ! (2019年9月8日 19時) (レス) id: 2190e9e698 (このIDを非表示/違反報告)
Alice@夜未(プロフ) - ADAMASさん» 鬼滅は声優豪華すぎてビビりましたw 夢主の呼吸法は後々明かされる感じになるので、ぜひぜひこれからも読んで確認してください! (2019年9月7日 20時) (レス) id: 309172d3e5 (このIDを非表示/違反報告)
ADAMAS(プロフ) - Alice@夜未さん» 夢主ちゃんの呼吸法が気になってます。後々判明する感じですか? (2019年9月7日 18時) (レス) id: 2e674b225a (このIDを非表示/違反報告)
ADAMAS(プロフ) - Alice@夜未さん» ここから原作沿いになるっぽいですね。続編楽しみにしてます!あとアニメの話ですが柱の声優さんたち豪華すぎますね!甘露寺さんは花澤香菜さんとなんとなく予想してましたがドンピシャで当たった時謎の高揚感がこみ上げてきました笑 (2019年9月6日 1時) (レス) id: 2e674b225a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Alice@夜未 | 作成日時:2019年8月14日 16時