検索窓
今日:27 hit、昨日:5 hit、合計:121,012 hit

killing night 74 ページ26

はっとすると私よりも体の大きなうらたに抱きしめられていることに気がつく。

うらたに抱きしめられるのはうらた自身が弱っている時だけで、いつもは坂田のぬくもりばかりを感じていたから不思議な感覚だった。

坂田よりも全然きつく抱きしめていて、恥ずかしさに体温が上昇するのがとてもわかる。

うらたが私を数秒間抱きしめたままの静寂を打ち破ったのはうらただった。

「お前、今日体調でも悪かったの…?」

『いや、別に…』

突然の質問に気の抜けた声が出る。

「あいつ、もしかして知り合いだった?だから、手を抜いたりして…」

『全然知らない人だって。』

「じゃあ、その傷何。血も出てる。」

うらたは私の力ならすぐに殺すことができたのだということだった。

『ちょっと強かったし、体鈍ってただけ、かも。ごめん。』

先生から教えてもらった戦法を使いつつ、うらたのことをずっと考えていた。
私もプロだから仕事にこういうものを持ち込むのは悪い気がしたけれどやっぱり自分ではなんとかできるものじゃない。
でも、そんなことをうらたには言えない。

「早く、帰るぞ。もう、心配させんな。」

ガクッと視界が変わったと思えば下からうらたの顔が見える状態。
俗に言うお姫様抱っこというものだった。
たかが頬の傷だけでそんなことをしなくたっていいのに、だが力の入ったうらたの腕から逃げられる方法などはなかった。

『心配してくれるんだ。』

ほんの冗談のつもりだった。
またうらたに迷惑をかけてしまって変な空気でいたくなかったから言っただけだった。

「当たり前だろ、大切なんだから。」

耳を疑った。
うらたが私を大切?私を大切に思ってくれている?

じゃあ、うらたの私への大切はどんな大切…?
知りたかった、でもそこから先は聞くことができなかった。

私は船に戻るまで熱く赤くなった顔をうらたに見られないように俯くしかできなかった。

killing night 75→←killing night 73



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (204 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
436人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

霧雲 - 推しのうらたんと・・・?っっは!体が透けている・・・?・・いい人生だった・・・! (2021年8月8日 23時) (レス) id: 85272682ce (このIDを非表示/違反報告)
フラン(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです! (2018年12月21日 2時) (レス) id: 24d7937625 (このIDを非表示/違反報告)
緑のさくら(プロフ) - 終わってしまったああぁぁ!!!!すっごく楽しく読ませて頂きました!表現力が高くて、透明感がある表し方で、もう何から何まで全部好きでした!!表現を学ぶのにとても勉強になりましたね!wお疲れ様でした! (2018年12月21日 0時) (レス) id: cc75d0bcae (このIDを非表示/違反報告)
うめた。(プロフ) - 相原宙さん» 誤字でした!ご指摘ありがとうございます! (2018年12月8日 1時) (レス) id: 6ac6c419a5 (このIDを非表示/違反報告)
相原宙(プロフ) - 74の大切って言った後なんですけど、「うらたの私への大変」って「うらたの私への大切」ですか? (2018年12月7日 22時) (レス) id: bc22572701 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:うめた。 | 作成日時:2018年11月15日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。