killing night 67 ページ19
船の中に入った途端坂田は私を座らせた。
その顔は今にも泣きそうで悲しみに溢れた顔をしていた。
「あいつの所に行くん…?」
兄さんの言葉に惑わされた訳じゃなかった。
一度はここにいることが許された私。
私が4人とずっと一緒にいたいという気持ちに嘘偽りはない。
それでも私といることでいつか彼らに災厄が降り注ぐ、それはとても嫌なのだ。
でもそれは足が治った時の選択でも同じだった。
そんな葛藤に打ち勝ってでも私がこの船に居たかったのはあの人とまだ一緒にいたかったから。
居場所がないを理由にここに居続けた。
でも今はそんなこじつけの理由すら許されない。
兄がこしらえた居場所には私が入り込むことも許されてしまったからだ。
みんなが平穏に生きていくためには私がここを去り、兄と共に行くのが彼らにとっての幸せなんじゃないか、なんて考えてしまうのだ。
『わから、ない。』
兄さんが何を考えているのか、目の前のみんなが何を考えているのか。
『私は、みんなに必要?居ても居なくても変わらない存在じゃない…?』
バシン!
大きな音に気づいたのは自分の頰に痛みが走ってから。
私は坂田にぶたれたのだと気づく。
「そんなん、当たり前やろ!俺らがどんな手を使ってでもAをここに居させようとしたこと、Aがおらんとなんもできんこと、わかって言っとんの!?」
初めて坂田に怒られた。
それなのに坂田の目からは大粒の涙が溢れて出て立ち上がったはずの足をもう一度折り、私を抱きしめた。
「ごめん、ごめんな。居ても居なくても変わらんのやない。Aがおらんと通常運転ができひん。わかって…A…」
坂田の抱きしめる力で私の髪の毛はもうグシャグシャだ。
私が、居ないとダメ…?
坂田の言葉に放心状態になっていた。
みんなが今寂しげな顔をするのは私を手放すのは惜しいと思ってくれているから…?
だったら私は今まで………
抱きしめる坂田の腕をすり抜けて立ち上がった。
「A…?」
『ありがとう、』
そうして兄さんのいる船の上へ1人で行った。
こちらを見る兄さんの目の前へ立つ。
『兄さん、今度は私から話があります。聞いてくれますか。』
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霧雲 - 推しのうらたんと・・・?っっは!体が透けている・・・?・・いい人生だった・・・! (2021年8月8日 23時) (レス) id: 85272682ce (このIDを非表示/違反報告)
フラン(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです! (2018年12月21日 2時) (レス) id: 24d7937625 (このIDを非表示/違反報告)
緑のさくら(プロフ) - 終わってしまったああぁぁ!!!!すっごく楽しく読ませて頂きました!表現力が高くて、透明感がある表し方で、もう何から何まで全部好きでした!!表現を学ぶのにとても勉強になりましたね!wお疲れ様でした! (2018年12月21日 0時) (レス) id: cc75d0bcae (このIDを非表示/違反報告)
うめた。(プロフ) - 相原宙さん» 誤字でした!ご指摘ありがとうございます! (2018年12月8日 1時) (レス) id: 6ac6c419a5 (このIDを非表示/違反報告)
相原宙(プロフ) - 74の大切って言った後なんですけど、「うらたの私への大変」って「うらたの私への大切」ですか? (2018年12月7日 22時) (レス) id: bc22572701 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うめた。 | 作成日時:2018年11月15日 17時