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killing night 42 ページ43

「Aは先生のこと好かんかったん?」

センラからの問いかけに俯いた。
俯く前に、Aの緑の瞳が揺れ動いたのが見えた。

『好き、だった。私にはたった1人の人だったから。』

膝に置いた手をぎゅっと握りしめて爪が食い込んで血が滲みでそうだった。

俺はAの手を抑え、Aの意識をこちらに向かせた。

『うら…』

「やめろ。自分は傷つけるな。」

そのままAの手を繋ぎ、Aは話を続けた。

『私はずっと先生の所で仕事をやっていけるって思ってた。でもそうはいかなかった。』

潤んだ瞳のままAはその言葉を放った。

『先生が願ったから。私が先生の前で行う最後の任務は先生を殺すことだって。』

ここにいる全員がその言葉で固まったのを感じた。

「嫌だって言わなかったん…?」

『先生が大切だけど、殺したくなんてなかったけど、あんな先生の顔見たら言えないよ!』

Aは堪えていた涙を我慢出来ずに流した。

まだ細くて小さな体で何を背負ってきたかわかった気がした。

今Aは18で、先生と別れたのは4年前。だとしたらAはまだ14。
本来なら中学生として真っ当に生きているはずだった。

一人前の殺し屋であろうともまだ子供だ。
あの小さな頭で短い時間で一体どれほどのことを考えたのだろう。
自分の記憶でたった1人の人に頼まれたことを断れない。でも妥協もできない。

それでもあの時の彼女は妥協するしかなかったのだ。

「もう、ええやろ。」

まーしーは立ち上がってAのそばに行き、Aの頭をそっと撫でた。

そのまーしーの姿を見たように坂田は一緒になき、センラはAに温かい声をかけた。

「Aの世界には先生しかいなかったかもしれません。でも、今は僕らがおるから、僕らはAを1人になんてせんから。」

『ありがとう…』

きっとみんなAに触れたいと願っている、弱さを隠したAが愛おしくて触れずにはいられなくて、それでも繋いだ手を離したくはなかった。

彼女は知っているだろうか、人を愛するということがどんなことか。人に愛されているというのはどんなことか。


きっと知らないんだ。

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神楽 - いいですね〜!!もっとイチャついてほしいっす←更新頑張って下さい! (2018年11月4日 2時) (レス) id: b691fd4806 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うめた。 | 作成日時:2018年10月22日 22時

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