修羅の町のポリ ページ9
まあ、遠くからバタバタと足音も聞こえてきたしそろそろお暇できるだろう。
出されたお茶に口をつけずに帰るのは流石に失礼に当たるので、お金が来る前に飲み干してしまおうかと湯飲みを持ち上げた。
「……ナンデスカこれ」
「俺が直々に淹れてやった茶だが」
「何を?毒を?てかこれお茶です?未確認生命体じゃなくて?」
「オイさっきの殊勝な心構えはどこ行ったよ。災いの元がタルッタルじゃねェか。っつーかマヨネーズをバカにすんじゃねェエエエエ!」
……コンマ0.1秒で戦慄したが。
ほのかな緑茶の香りを殺しにかかる酸味。いや、もはや茶葉は死んだ。緑が見えない。あるのは湯気のたつ黄色だけ。
なぜそこにキミが?と言わずにはいられない。これが地上の「お茶」?いやいやまさか。いやでも副長さんは平然と飲んでるし、これ以外と美味しかったり……?
好奇心と、もてなされた側としての常識が背中を押し、恐る恐る口をつけてーーー
「ーーー副長ォオ!!!」
寸前まで近付いてきていた足音。バァン!と。想像の100倍は荒々しく開かれた襖に思わず緑茶(?)が吹き出た。
喉に、鼻に未知の味が逆流し全力で噎せ返ったが、入ってきた男ーーー先刻一心不乱にミントンのラケットを振ってた人だーーーは私など最早眼中に無かった。
「ンだザキ、今来客中で……」
眉をしかめた土方さんに、ザキと呼ばれた男は叫ぶ。
「2番隊の討ち入りにて負傷者多数!
出血が多く、救護の手が足りません至急人手を!」
「何ィ?」
急激にピリついた空気に場違い感を感じるのは仕方ない。急転直下、温度差で凍える。なんならげほ、と息も絶え絶えに吐き出した咳すら相当に空気が読めてない。
「あのお……お忙しいようでしたらまた後日で!お大事に!」
警察なら料金を踏み倒すことも無いだろうし、お取り込み中なら日を改めます。ブチこぼしたお茶(?)を何気なく拭い去り、編み笠と預かってきた薬箱を引っつかめばーーー
「オイ」
それは悪手であった様だ。一瞬にして忘れ去られた私の存在が再び認知されてしまった。
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木の実(プロフ) - はるさん» はじめまして!大変に恐れ多いコメントをありがとうございます…!言い回し等は探り探りの作成であった為、その様なコメントを頂けるととても嬉しいです!はる様のコメントを励みに続編作成に注力したいと思います。これからも何卒よろしくお願い致します! (2021年10月8日 8時) (レス) id: 5cf2525d27 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。世界観が私好みですっかりハマってしまいました。設定が細かく丁寧で、言い回しが綺麗なので読んでいてすごく楽しいです。作者様がとても優しい方なのだと伝わってきます。これからも応援してます! (2021年10月6日 23時) (レス) @page41 id: 9d3e0aca39 (このIDを非表示/違反報告)
木の実(プロフ) - ☆辻村春樹☆さん» はじめまして、コメントありがとうございます!世界観や表紙絵にまで言及頂き大変に嬉しいです…!勿体ないお言葉をありがとうございます!何卒これからもお付き合い下さると幸いです! (2021年8月31日 10時) (レス) id: 5cf2525d27 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - 初めまして。吉原編が深く関わる、この小説ならではの世界観がとても素敵だと思いました。つい何度も読み返してしまうくらい好きです。続きを楽しみに待ってますね…!トプ画のイラストも、作品の雰囲気に合っていて、凄く良かったです! (2021年8月29日 23時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木の実 | 作成日時:2021年8月29日 0時