待てば甘露の日和あり【銀魂】

窮鼠猫を噛む ページ23

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『＿＿＿果宝、お母さんと約束しよう。

この先どんな事があっても生きるって。

少し先の未来では辛くも悲しくも無くなってるかもしれない。ひょっとしたら何か良い事があって、幸せになってるかもしれない。


死ななければ、それが待てるから』



痩せ細った母の小指。その時の表情がどんなものだったかは思い出せない。


思い出せないそれが
私にとっての。




ーー

ーーーー




ぱ、と不意に目が開いた。



薄ぼんやりした視界にまず入ってきたのは木目の天井。医院の天井は灰色の筈で、ゆっくりと首が横に傾ぐ。


続けてのろのろと足元を見れば、窓の前には一つの机があった。所謂社長席、というヤツだろうか。それにしては簡素だけれども、ちんまりした椅子が一つ奥に入っている。


「『糖分』？」


そして、否が応でも目につく大きな額縁。格言でも入れてあるのかと思いきや一体何を崇め奉って居るのか。新手の宗教か。


ぼーっとした意識に疑問符を浮かばせていればふと、おでこがひんやりと冷えている事に気付いた。手を当ててみれば濡れタオル。想像よりもなんだかぐっちょりしている。


なんだっけ、と頭を回そうとしてーーーー急速に覚醒した。


医院に来た吉原の救世主、死神太夫の名前、それで


「て事はここッ〜〜〜っッぅ!?」


跳ね起きれば全身が縮こまるような頭痛がした。頭のてっぺんから一撃、冷たくて気持ちよかったおでこにも渾身の一撃。明らかに打撲の痛みだ。いや下手すると頭割れてるかもしれない。


声にならない悲鳴に悶絶していると、からりと隣の襖が開いた。出てきたのは案の定「救世主様」で。


というか何で私こんなに痛いのにこの人こんなケロッとしてるのだろうか。アゴの材質が鋼だったりするの？


「……ちょ、待って、来ないで下さい」

「いやココ俺ん家だし。来ないでじゃねーよ。どーゆー教育受けてんだおたく」



大体、刃物振り回す女はモテねーぞ。



男の言葉でハッとした。
懐に入れていた小刀が無い。


「……そりゃあ、こっちの台詞ですよ。患者のフリして来て頭突きまでキメてこんな」

「いや先手騙し討ちロケットしたのお前。ナイフアタッカーもお前。んなに強くやってねーけど何、記憶飛んでんの？都合良いとこだけ逝ったの？

つーか、患者のフリも何も偶然だよ。アンタがあのジジイの下で見習いしてるなんざ知るわけねーしな。あの後の言い訳も苦労したぜ、ったく」

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