窮鼠猫を噛む ページ22
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全ての情報が繋がった瞬間、ぶわりと全身が総毛立つ。指先から血の気が引いて冷たかった。
足からゆっくり力が抜けて、身体が前にくずおれていくーーー
「ーーーわけ、っ無いでしょうがァ!」
私は叫んだ。それはもう、食べられる寸前の小動物が牙を剥く様に。
「は?」
地面に付きかけていた膝に急遽力を入れて、そのまま全身で頭突きをカマす。
一瞬過った虚を突かれた様な白髪の男の顔と、ガツンと脳天に星が回る様な衝撃。捨て身の一撃は奇跡的にも、倒れる私を一応抱き止めてくれるつもりだったらしい男の顎に入ったようだった。
勢いを殺しきれずにバランスを崩した男を見逃さず、そのまま無我夢中に突き倒して。
「うぐ、おま、ちょっと落ち着けって!オイ!」
けたたましく治療台の道具が四方八方に散らばる。反転した世界と、両足全体重で押さえ込んだ男の半身。
吉原の救世主である白髪の男。鳳仙を倒した地球人。もともと逆立ちしたって敵う筈の無い相手だ。この機を逃したら次はない。
手近なメスを思いっきり振りかぶる。手首を弾かれて取り落とした同時、開いた方の手で落ちていた金属トレイを叩き下ろした。
男はそれを軽く首を捻って避ける。地面に音が反響して鼓膜が震える。
嫌だ。連れ戻されて堪るか。
この男と組んで
「死んで、たまるか」
懐から小刀を抜いて、間髪居れずに首めがけて振り下ろした。けれど、手応えは固い。肉を貫いた感触もない。
思わず瞑ってしまった目を開ければ、男の木刀がぎりりと刃を捌いていた。
木に食い込んだ刃先がにっちもさっちも行かない。ありったけの力を両手に込めて押してもびくともしない。そもそも足で肩を抑えてる筈なのに、どこにそんな力があるのか。
「何で、」
「……流石、吉原随一の薬師サマ。激しいプレイじゃねーか。こーゆーサービスあんなら看板に書いといてくれる?」
男は片手で私の刀を止めたまま場違いに気の抜けた事を言う。そして事も無げに体を起こし、「あとな」と首を後ろに反らした。
「ちったあ話聞いてくれやネーちゃん」
ガツン、と白い髪がおでこに襲来して火花が散る。ぐるり、世界が回った。
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木の実(プロフ) - はるさん» はじめまして!大変に恐れ多いコメントをありがとうございます…!言い回し等は探り探りの作成であった為、その様なコメントを頂けるととても嬉しいです!はる様のコメントを励みに続編作成に注力したいと思います。これからも何卒よろしくお願い致します! (2021年10月8日 8時) (レス) id: 5cf2525d27 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - 初めまして。コメント失礼します。世界観が私好みですっかりハマってしまいました。設定が細かく丁寧で、言い回しが綺麗なので読んでいてすごく楽しいです。作者様がとても優しい方なのだと伝わってきます。これからも応援してます! (2021年10月6日 23時) (レス) @page41 id: 9d3e0aca39 (このIDを非表示/違反報告)
木の実(プロフ) - ☆辻村春樹☆さん» はじめまして、コメントありがとうございます!世界観や表紙絵にまで言及頂き大変に嬉しいです…!勿体ないお言葉をありがとうございます!何卒これからもお付き合い下さると幸いです! (2021年8月31日 10時) (レス) id: 5cf2525d27 (このIDを非表示/違反報告)
☆辻村春樹☆(プロフ) - 初めまして。吉原編が深く関わる、この小説ならではの世界観がとても素敵だと思いました。つい何度も読み返してしまうくらい好きです。続きを楽しみに待ってますね…!トプ画のイラストも、作品の雰囲気に合っていて、凄く良かったです! (2021年8月29日 23時) (レス) id: 4b0a37e42a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木の実 | 作成日時:2021年8月29日 0時