寝 起 き が 可 愛 す ぎ る【短編集】

くろお てつろう ページ5

さよーならー、という声と共にそれぞれ部活や、帰る人達で騒がしくなる教室と廊下。

 
日直ということもあり、厄介な掃除がある。
チャチャッと済ませて帰ろうと思ったが


「あれ、寝てる」


黒板のところから1番後ろの席でもハッキリと黒尾だと認識できる特徴的な髪型。

部活なら行かないといけないのでは？と思うが
『今日部活ないんだよ』と昼休みに友達と話していたことを思い出す。

 
まぁどっちにしろ起こさないといけないし起こすか、と思い、机をトントン、とし起こす。


「黒尾〜、みんな帰っちゃったよ。」


というと、ゆーっくり目を開き
色っぽい切れ長の目で見つめられる。

どきり、と胸を打つのがわかった。
すると手を掴まれ指を絡ませてくる。
突然のことに驚き、何も抵抗しないでいると


「…夢か」


なんて言って、また目を閉じる。
大きくて男らしい手をみてまた胸が打たれる。


「Aなわけねぇもんな」


と寝起きの少し掠れた声で言う。
悲しそうに聞こえた、なんて私の耳は都合がいいかな。


「Aだけど。」


と言えば、ふ、と笑い「夢だから良いか。」といい少し顔を上げる。


「好きだ」


そういう彼は普段の大人っぽい顔でなく、
いたずらっぽい笑みでもなく、
辛そうに、苦しそうに笑う、見たことの無い顔だった。

ゆっくり握っている手が離されていく。
握り返す勇気なんて持ち合わせてるわけがなくて。


しゃがんでその様子を見てると「おい黒尾早くしろ！」という夜久くん。寝てることに気がついて
申し訳なさそうに「ゴメンなこいつが」なんていってくる。


「おい、起きろ。いつまで寝てんだよ。」

「いで！」


チョップされ小さく悲鳴をあげ起きる黒尾。
「やっぱ夢か…」なんて呟く。


「Aちゃんに迷惑かけてんだから！」


先行ってるからなと夜久くんがいえば焦ったように帰る準備を始める。


「あぁ…わりぃ。」と言い目が合うと、目を見開く。
途端また焦りだし、目が泳ぎ出す。

その姿が可愛くて、ふふ、と笑みがこぼれる。



「ね、寝言とか！言ってなかった！？」

「特には…？」



良かった良かった。と一息つく。

「じゃーまたあした。」なんて言って帰っていく君。



 



 




寝言聞いてた、っていうのは内緒にさせてね。



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ポッキーさんリクエストありがとうございました！

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