貪 欲 【短編】

Kunimi.a ページ17

目線 国見




「徹くさい！死ね！」

「え！？Aちゃん辛辣！！」


目の前でいちゃつくカップル。
叶うことのない片想い。
そして諦めることのできない片思い。


「くにみんはこーんなにいい子なのに！」


徹みたいに悪いことしないよ！
そう言って俺の頭を撫でる。人の気も知らないで。
屈託のないこの笑顔に惹かれる人は多いだろう。
「あーかわいい」そう言いほっぺをつんつんしてくる


「いい子、ですか」

「うん、めっちゃいい子」

「それはありがとうございます」


ぷっくりしたピンク色の唇を見る。
これも全部及川さんのなのか。
そう思えば思うほど嫌な思考は回るもので

それでも一応俺の中にも良心はある、

『奪う』 『奪わない』

その考えがグルグルと頭の中を巡る。



『奪っちゃえ』



そう頭の中で聞こえたと同時に体が動き
自分の唇をAさんの唇に押し付ける。


「…！？おい！」


花巻さんの声でぱっと離れ彼女を見つめる。
少し涙目で唇を噛んで睨んでいる。
罪悪感があったが、天秤では欲が上だったようだ。



「いくら国見ちゃんでも許さないよ」


及川さんの怒った声が聞こえるが何も怖くない。
自分でもびっくりするくらい落ち着いていた。


「Aさん、俺いい子なんかじゃないです」

「くにみん？」


困惑したような声。
そんな声ですらもっと聞きたいと思う。


「及川さん、悪いことしてたんですよね」


そういえば、頭の上にはてなマークを浮かべるも
うん、と頷く。
さっきの会話を知ってるほかの人達は黙って俺を見ている。



「おい、国見。」



珍しい及川さんの苗字だけの呼び。
でも何故か全く怖くなくて、煽るように言葉を続ける。





 






「じゃあ俺も悪い子なんで、

やることやっていいですか？」






 

いや、とも言わない君は本当にずるいよ。




 



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眠り猫さんリクエストありがとうございます！

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