時間／熱 ページ4
▽
「なーに作ってるの？」
振り向く暇はなく、ゆるりと腰に巻かれた腕に肩にかかった重さ。野菜を炒めていた手を止めて、彼の頭を数度叩いた。重たい、の合図。
「肉野菜炒め」
「えーっ、僕はキッシュがいいね！Aの作るキッシュ！」
「はあ？ついこないだ食べたばっかりでしょ」
ぐいっと彼の顔を押して、火を止める。このままじゃ彼のせいで焦げてしまいそうだ。そうだ汁物は味噌汁にしよう、なんて鍋を用意する。それでも彼は退かないままだ。
「庶民的な料理すぎるね」
「うるさいボンボン」
「悪いことを言うのはどこの口かな」
そういって、私の頬を後ろからぎゅ、と中央に寄せる。邪魔だと跳ね除けようと彼のその手に自分の手を重ねたとき、その手の角度が変わって そのまま彼の唇と重なる。お互いの呼吸を溶かす数秒の出来事。
「……ば、かじゃないの」
至近距離で微笑するその顔を抓る。白い肌に少しだけ赤みが増して、「痛いね、」と私の頬に手を添えた。
「ねえひより」
「ん？」
「私のこと好き？」
ちょっとの意地悪。いつも彼に流されてばかりでつまらないのだから少しぐらい大目に見てくれたっていいでしょう。彼はその目を少しだけ見開いて、それでも狼狽の表情を浮かべることはない。
「当たり前だね」
わざと " 好き " と言わないのが彼らしい。どれもこれも、愛を求める彼には同じかと思えば 彼は私からの愛を特別と視てくれるから、嬉しい。
「好き？」
「うん」
「すーき？」
彼は深く求める私に呆れたように笑う。「うん、好きだよ」とその口が紡いだ言葉に自分から言っておいて恥ずかしくなる。私も、と続けたあとに彼の唇に想いを重ねる。薄い皮だけで伝わる体温が心地よくて、やっぱり火を止めて正解だと口角をあげた。
不意を取られて目を丸くしていた彼は漸く状況を整理したのかその頬に微かな熱を集めた。絡んだ指から、彼への想いが伝わって、＿＿
．
もう少し、ふたりでいようか
．
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櫻井かぐら(プロフ) - 果蓮さん» お返事が遅くなり申し訳ございません。とても励みになるお言葉を有難うございます(*¨*)日和くんいいですよね！こちらこそ読んでいただきありがとうございました！ (2018年3月18日 11時) (
レス) id: fdaf4afefc (このIDを非表示/違反報告)
果蓮 - 私、日和君大好きなんです！とても私好みな小説でした！甘い内容でキュンとしてしまいました！素晴らしい小説を読ませていただきありがとうございました！ (2018年2月23日 17時) (レス) id: 6f9ac6c8d1 (このIDを非表示/違反報告)
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