午前零時の泉で花束を。 (ページ2)

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一番。ページ2

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午前零時。

日付が変わった途端に、携帯のバイブレーションが鳴り止まず、あまりの五月蝿さに通知を切ってしまいたくなる。しかし、仕方なく通知を切らずにそのままにしているのは、彼女からの連絡を待つため。しかし、10分、20分、30分経っても彼女からの連絡が入ることは無かった。彼女は、確かに夜遅くまで起きていられる体質じゃないのは、分かっているのだが、少しばかり残念だと思っている自分がいる。

一番に祝ってほしい、と思うのは我儘だろうか。

学院に言っても、一向に彼女の姿を見かけることはなく同じクラスの愛しの遊木真に聞いてみるが、「あれ、さっきまでいたんですけど……」と嘘はついてないような素振りを見せ、キョロキョロと教室を見渡していた。流石にこれは怪しいと感じた彼は、帰宅前の彼女を待ち伏せしようと決意したのだが、何と不運なことなのだろうか。今日は、自分の誕生日である。Knightsに盛大に誕生日パーティーを行われてしまった。

それが嫌だというわけでない。断じてそれないのだが、彼女の姿を一日見れないとなるとどうもむしゃくしゃして、仕方がない。自分が帰る頃には、やはり辺りはすっかり暗くなり二年の教室も静かであった。まさか、彼氏の誕生日を忘れてるなんてそんなことあるのだろうか。自分で言うのも負けな気がし、電話をしようにもかけることが出来ない。

昇降口でうろうろしていても、解決策は見つかるわけがない。まだいるかもしれない、とくるりと方向を変えて彼女の教室に向かう。

「わっ、！」
「えっ、ちょっ、！」

すぐ後ろにいたのは、ずっと探していた彼女の姿である。今日一日、あんなに探しても見つからなかったのにこんなに簡単に見つかってしまうなんて、何だか気が抜けるというか、馬鹿馬鹿しいような気分になってきた。

「今までどこにいたの、探したんだけど」
「えっ、と、あはは……」

何かを隠すように笑う彼女のことをじっと見つめる。申し訳なさそうに、笑いながらチラチラとこちらの様子を伺う彼女が、小動物のように見えた。思わず、彼女の頬をむぎゅっと掴んでしまった。「いひゃひゃひゃ」と変な声を出す彼女が、何だか面白くて笑いがこぼれる。何が面白いのか分からない彼女は、不思議そうにこちらを見上げ、挙動不審になっている。

「ごめんごめん、ちょっと面白くて」
「何も面白くないですよ！」

そして、思い出した。
彼女にまだ、「おめでとう」と言われていないことを。