忘れられない １

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翌日。

ニノ、何時に来るんだろ。
ちょっと、そわそわしてきた。

っていうか、今日、櫻井さん休みだったから、翔さんいじるって無理だよね？
大体、いじるって何。

お昼ごろ。
売り場で商品を畳んだりしていたら、細身のスーツを軽く着崩して、小柄だけどおしゃれな人がふらあって入ってきた。
「いらっしゃいませ」
「……」

無視？笑顔を作って、気を取り直して声をかける。
「何かお探し……いいい？ニノ？」
私の方を見てちょっと笑う。

「あのさ、このジャケットに合うドレスシャツ選んでよ、A」
わざわざ大きな声でなんなの。
「え？ええ？」
「お待たせ、A」
この、声は。
振り返ったら、大野さん。

何なの。カッコいいスーツ姿だ！
細身のスーツに、インナーはおしゃれなカットソー。きゃー！誰！

「何やってんの？」
松本さんも近づいてきて、二人を見てふふんって笑う。
あ、何か知ってるんだ。なにこれ。なにこれええ。

３人に取り囲まれて、ひーってなってたら、雅紀くんがこっちを見て、わー！とか言ってる。

「えっと、えっと、なんなんですか、これ」
「潤くんに、メシ誘いに来た。今日は、この人これだから、ラーメンでも食いにいこ」
ニノがそう言って、にーって笑う。

何気なくふっとフロアに目をやったら、真向かいの雅紀くんとこのパートさんが、じーって見てる。
ええ？って思ったら、隣の売り場のゆーちゃんと、その部下も、こっち見てる！

逃げる。
逃げよう。

私がそっと後ずさりしたら、ニノに腕をぐっと掴まれて、耳元に口を寄せる。
「あの女、スーツ男子好きなんだろうなって思ったらやっぱね」

あああ！なるほど！だから、いつもカジュアルに着崩してる雅紀くんに眼中ないんだ！
いいこと聞いた！教えてあげなきゃ。

私の顔をみて、ニノがふん、って笑う。
「いまAバカだから相葉さんに教えてあげなきゃって思ったでしょ？だめだよ、教えちゃ」
「どうして？」
「好きになっちゃっていいの？俺らのオアシスにあの女入って来てもいいの？」
「……」
絶対やだ。

「それ、俺困るんだけど。毎朝偶然を装って声掛けてくるのもうんざりしてんのに」
店長がぼそっと言う。気付いてたんだ！
「でも、可愛いじゃないですか……」
「可愛いから放置してるだけ」
「……」

「うん。俺を早くに出勤させるきっかけになったんだけどね。ターゲット変わってホッとしてる」

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