忘れられない １

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雅紀くんの、好きな人は、結構すぐにわかった。

だって、いつもチラチラ見てる。
隣の売り場の、ゆーちゃんって子。

参った。パートの泉さんと葵さんの嫌ってる人だ。
しかもうちの店長に気があるとか、時々こっそりパートさんネットーワークで仕入れた新ネタをわざわざ私に吹き込んでくる。

嫌いになりたくないのに。
好きな人の好きな人を嫌いになるなんて。

しかも店長がおやすみのときなんか、時折櫻井さんが、すっごい俺様っぽく、
「A、行くぞ」
とかお昼を誘いに来たりする。

それを見たときの、あの目つき。
怖いよ。怖い。ほんとやだ。

１年かけて、ゆっくりフロアの女子に嫌われて行くのを自覚。

もう誘いにこないでって言っても、行き先一緒なんだからいいでしょ！って。
鈍感すぎる。

救いはパートの二人なんだけど。
この二人の意見がややこしいの。

どういうわけか、ニノが参戦してくる。
Aさん、彼氏を作ったらいいのよ、櫻井さんと付き合えば？噂を真実にすればいいのよ！
っていうのは、葵さん。
その話になると、泉さんが反論する。

「何言ってるの、絶対、二宮さん！」
「どうしてあのひと！何か暗いし……」
「すっごいイケメンなんだって！」
「うそだ！本屋行っても猫背でいつも俯いてるし、寝癖が酷いし、服も適当だし！」
「あの良さがわからないなんて」
「それならまだ店長の方がましだわ」
「店長？私今朝躓いただけで怒鳴られたのに！」
「躓いただけで？」
「ぼーっとすんなって」
「こわー」

あの、口動かさずに、手動かしてください。
とは、いえない。
ぱくぱく。

「いらっしゃいませー」
雅紀くんが通りかかって、私の方をちらっとみて、にこっと笑う。
笑い返したら、それをみて二人がひそひそ。

「なんですかあ」
「お姫様だっこ事件のあとは、いい感じだとおもったのに」
葵さんが雅紀くんを睨んでる。

「え？なんでそんな嫌うの……」
「あの女を好きだって言うような男はダメだ」
ああ、この話題、やだ。逃げたい。

「あのね、アナタたちより一回り以上多く生きるとね、色々わかるのよ！」
お客さん、こんな時に限っていない。

「……」
「天然ぶってる女が嫌いで吐き気がする！」
「……」
「葵さん、わかるわあ、可愛いのを売りにしてるかもしれないけどね、容姿はいつか衰えるんだ！男も女も！肝心なのは、中身！ほどほどの見た目と中身！それと財布の中身！」

21→←途中で失礼します

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