忘れられない １

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松本店長が、ぷりぷり怒りながら外出して、私たちは掃除したり、商品を陳列したり、
頼んでいたお弁当なんかを食べたりしてる内に２時10分前。

「店長帰ってきたら、説明会行ったってお伝えして」
そういい残して、事務所横のスタッフルームに向かう。

バックヤードを通って、エレベーターに乗り込んで閉めようとしたら、細身で前髪がサッラサラの人が、走ってくる。
「まって！まってのりまーす！」
エレベーターの扉を開けて待っていたら、一緒にエレベーターに乗り込んだ猫背で俯いてる若い男の人がぼそっと言う。

「うるさい奴来たから閉めて」
「ええ？」
「早く閉めて」
「ええ？」

「すみません！」
そういいながら飛び込んできたその人は、満面の笑みで私を見下ろして、ありがと！って言った。
「いえ……」

「うるさいのが乗ってきたよ……」
「……あ！君こないだの！なんだっけ、なに宮くんだっけ？」
「わたしはあなたのこと知りません」
「そんなわけないでしょー！」
「イイエ、しりません」
「またまたあ」
「くっそ、早くエレベーター動けや！」
「コレ業務用のエレベーターだから遅いんだってば。ね、なに宮くんだっけ」

二人は知り合いなのかな？
なんとなく首をかしげながらエレベーターがスタッフルームのある４階まで到着するのを待つ。

「うざ……」
「ええー……ショック……せっかく仲良くなれそうって思ったのに……」
走ってきた人が、しょんぼりした。
なんかかわいそう。

「あなたは松本サンって人と仲良くすればいいでしょ。わたしにかまわないでよね」
「松本くん来るかなあ」
わくわくしたように、目を輝かせてる。

松本って、うちの松本かな。
そう思ったとき、エレベーターが到着する。
取り合えず、二人が降りるのを待ってから、私も出る。

目的地が一緒ってことは。
今回新しく入ったテナントの店長さん？

スタッフルームに入ったら、櫻井さんがパッと席から立ち上がる。
「あ、お忙しいところ申し訳ありません。短時間で済ませますので。こちらの応接室にお願いします。お茶お出しして」
最後の言葉は、近くにいた女性スタッフに声を掛ける。

「相葉さん、二宮さん、花邑さん、こちらにどうぞ」
さわやかな笑顔を見せて手のひらで、奥の応接室を指す。

席に座ると、櫻井さんは私をみてニッコリ笑って聞く。
「花邑さん、松本さんは？」

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