忘れられない １

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……目が覚めてから、真っ青になる。
私、なんてことしちゃったんだ。
社会人として、失格だ。

風邪は休みの日にひけ！って松本さんなら言う。絶対言う。
それか、朝から病院に行けよ、バカかって怒る。

そういえば私、相葉さんにお姫様だっこ……！
あああ。恥ずかしい。恥ずかしくて、熱上がる。

こんこん、という控えめなノックの音がして、ゆっくりドアが開く。
見たら、パートの泉さんが私の荷物を持って、入ってきた。

「Aさん、大丈夫？」
「すみません、ご迷惑おかけして」
「店長が、今日はもういいから、病院行ってっていわれました。明日は休んでいいからって」
「すみません……」
「気付かなかった俺も悪いって落ち込んでましたよ。相葉さんでも気付いたのになんでって」
「……」
なさけない。もう、ほんと。

「タクシー呼んどきましたんで」
「ありがとうございます……」
「下まで見送りますね」

起こされて、ふらふらする体を支えて、やっと従業員出入り口まで、行く。
警備室の前で二宮さんがタバコをすっていて、え？って言ってる。
「どうしたの」
「熱が、あるみたいで」
「あるんですよ、39度くらい」
泉さんが、言う。

「39度？それやばくない？病院は？」
「今から、救急に、行って来ます」
「ああ、もう、夕方だもんね。お大事に。……あ、そだ」

二宮さんが立ち上がって、私にほいってポカリスエットを渡してくれる。
「これ」
「今から飲もうとおもったとこだったけどあげる。早くよくなってね」

にーって笑って、私の手ペットボトルを握らせてくれる。
「ありがとうございます」
それだけ言って、タクシーに乗り込む。
泉さんが、じいいいって二宮さんを覗き込んでる。

ん？いいえ、みたいなやり取りしてるのを見て、手を振ってから、シートに身をゆだねて、ため息を吐いた。

自分の家の近くの、救急病院に着いて、診察を受けたら、点滴をといわれてベッドに横になる。

家族にメールしたら、妹が、迎えに来てくれた。
薬を貰って、妹の車で家まで帰って、ベッドにもぐりこむ。

ああ、恥ずかしい。明日は休んでいいとして、
明後日、なんて謝ろう。お姫様抱っこなんて！
もう、恥ずかしい。

でも、あったかかったし、額に触れた手は大きくて、ひんやりしてて、
いい香りがした。細いのに力強い腕と、広い胸の中。

思い出して、胸がきゅうって音を立てた。

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