忘れられない １

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「ふー。旨かった」
店長が、帰ってくる。
「お帰りなさい。食堂行ってたんですか？」
「いや、翔さん、近所に行きつけの店があるってほんとだったんだな」
「翔さん？」
「マネージャー」
「小一時間で仲良くなったんですねー」

思わず、感嘆の声が漏れる。
「おお。マスターがすっげ個性的で」
「マスターさん」
「大野さんって言うんだけど、翔さんがお店の鍵開けて中入って、ぼーっとしてるマスターに、さとしくん！お昼ごはん！って言って無理矢理ご飯準備してもらって。その間に翔さんがテーブル拭いたりしてんの」
「へえー」
「思わず手伝った。で、メシ食い終わって、店から出るときに、翔さんが、準備中って札を営業中って変えるんだよ。翔さん休みのときどうすんの？って聞いたら、翔さんが休みのときは休んじゃうこともあるとか言ってた」
「なんかすごいお店ですね……」
「多分片手間でやってる。本業他にあるっぽい。すげーだろ、また店の感じもすっげーよくて、夜カクテルバーになるらしいから連れてってやる」

なんだか、すっごく気に入ったっぽい。
へえ、て思いながら店長が店内をぐるっと見る。
「あれ、もう全部売った？あのニット」
「はい。ダメでした？」
「じゃあ、今度こっちのジャケットお願い」
「またですか……」
「Aさんならできるって。……いらっしゃいませー」

店長がすっごいカッコいい顔をきらーんってさせて接客しに行く。
ジャケットを店の動線の中心に持って行って、トルソーにジャケットを着替えさせる。
エリをちょっと立てて、軽く袖を折り返す。
インのシャツは、派手なやつにしよう。

せっせと着替えさせてたら、うちの店の前に人影。
振り返ったら、相葉さん。

「どうされました？」
「これ、いいじゃん」
「インナーですか？」
「ジャケット！新しく入ってきたやつ？」
「全く売れないから着せてるんですよう」
「……Aマジックだなー」
「私この前ミラクル相葉って言われてるの聞きましたよ？靴下一足買いに来た人に10万円分服を買わせたって」
「10万はおおげさー。９万円」
「ふふふ」

笑ってたら、相葉さんが、ポツリと言う。
「やっぱり、ニノと仲良くなれたよ。俺ね、仲良くなれる人って一目見てわかるんだ」
「へえ。すごいー」
「だから、Aちゃんとも、仲良くなれるの、絶対」

キラキラした目で、相葉さんが、そういった。

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