忘れられない １

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「おはようございます」

初顔合わせの、緊張の、一瞬。
噂に聞いてた、お客さんに対する態度と、部下に対する態度が、
南国と南極くらいの差があるよって聞いてた噂の松本さんが、店長になった。

百貨店の、リニューアルオープンで、今回新規入店することになったうちのお店。
ターゲット層は20代30代の、カジュアルからビジネス、一部フォーマルなんかも取り扱う、メンズ＆レディスブランド。

他の店からチーフになって、栄転で、異動することになって。
認められたって喜びのつかの間、店長が松本さんだと知っていきなり緊張。

怖いよ。
ほんっと、怖いんだよ。

什器を動かしたり、商品を搬入して開店準備をする、初日。
松本店長が、私と、スタッフ３人を見下ろして、言った。

「馴れ合う気はないからそのつもりで」

今でこそ、松本さんったら、照れ屋さんなんだから！って背中にツンツンできるくらいの仲になったけど、２年前の第一印象は最悪。


「あ、企画営業の櫻井です。どうも」
暫くして、やってきた百貨店の営業マネージャーはびっくりするほど爽やかな人で、私たちににこやかに話しかけてくる。

「あ、チーフの花邑です。宜しくお願いします」
「はい、こちらこそお願いします。花邑さんのお名前は？」
「Aです」
「Aさんね、はい覚えました。彼氏の有無とか好みの男性のタイプなんかはおいおい聞いていくことにして。まずは新しいテナントさん対象に、当社の基本的なマニュアルや業務ついて説明会を行いますので。代表の方、本日午後２時から事務所横のスタッフルームにお越しいただいてよろしいでしょうか」

……軽いんじゃない、ユーモアを交えてすっごい話しやすい。
店長とは妙に気が合う感じ。

「では、オープンしたら、ランチお誘いまってますねー」
なんていいながら、去っていく。

「かっこいいー」
パートさんが櫻井さんの背中を見て、呟く。

「仕事覚えるより先にイケメン覚えるとかやる気あんの？」
松本店長の、ブリザード。

皆が体を縮めて商品の梱包を解いていたら、店長がいきなり電話に出て、怒り出した。
「はあ？それだと困るんだけど？」

ひー、怖い。
「……はあ。しかたねーな。行くから待ってろ」

電話を切った松本店長が、私を見て言った。
「説明会、Aが行って」

……いきなり下の名前でよびます？普通。

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