忘れられない １

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彼の視線の先にはいつも
あの子がいた。


彼女を見つめる彼の横顔は、
ほんとうに綺麗で優しくて切なくて、


私が彼の視線の中に映るなんてことはないって知りながら、
その残酷な横顔を、見つめる日々。


雅紀くんの恋が、
進展しますようにって
ついつい、祈ったりした。

日によってそれがプラスの進展だったり
それがマイナスの進展だったり。
つまり、恋が叶うといいねって思ったり
さっさとフラれちゃえ！って思っちゃったり。

私の心は汚れてる。

雅紀くんがそんな私の本音を知ったら
きっと、嫌いになる。

愛されなくてもいいから嫌われたくない。

なんて、わがまま？


どれだけ祈っても、
その目が私を映すことなんてないのに？
ただ、その苦しみから救ってあげたくて。


なんて、いいわけばっかり。
でもちょっとでも、彼につりあえるくらい、
優しくなりたい。
だから、全ての願いを押し殺して、想う。


私なんてどうなってもいいから、
雅紀くんが幸せになれますように。


そんな綺麗ごとを繰り返す。
呪文のように。

いつか、ほんとうに心から、
そう思えるようになりたいから、
やっぱり繰り返す。


雅紀くんが幸せになれますように。


雅紀くんの幸せと、私の幸せは、
同時には叶わない。


なのに、
毎晩祈ってる。


雅紀くんの願いが届いて、
私が無事、失恋しますようにって、そんな未来を。


そして、その願いがいつか叶ったとき、
『良かったね、』
っ、ちゃあんと笑えますように。


痛みできしむ胸を誤魔化しながら、
あなたの横で笑う。


「Aちゃん、大野さんのとこ、いく？」
「あ。えっと、外商に行かないといけないから、雅紀くん先行ってて？」
「商品渡すだけ？」
「うん」
「じゃ、一緒にいこ？」

ちょっと大きいショップ袋を両手に持って、外商まで行こうとしたら、
さりげなく荷物をひとつ持ってくれる。

「ありがと」
「いーよー！」


雅紀くんが、私の肩越しにあの人をちょっと見て、あの人とお疲れさまって顔で軽く笑いあって通りすぎて、はぁー、とため息をはく。

「ん？どうしたの？」
「なんでもなーい！よーし、元気でてきたぞー！」


ああ、今日もあの人が好きなんだ、って傷ついて、
雅紀くんのお日様みたいな笑顔に、癒される。

……プラマイゼロ。そんな日常。1

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