ふなかひがね ページ1
もう何度、祈ったことだろう。
彼に会いたい、彼に会いたい、彼に会いたい。
初詣でも七夕様にも流れ星にも、神社仏閣、神と名のつくありとあらゆる祈れるものは全部祈った。
節操ないからかもしれないけど全然会えない。
ある夏の日突然大好きな会社の先輩が
『宝くじ当たった』
と呟いたかと思うとその3日後には有給休暇消化してそのまま姿を消したのだ。
大野先輩、いまどこにいるんだろうか。
計画ではその年の誕生日に大野さんの好きなケーキを買ってきて、今日誕生日なんですよね？さっき買ってきたので良かったら！ってケーキを渡し、次のバレンタインに本命です！とチョコを渡す予定だった。
オイオイ泣き続ける私を見かねたのかうるさかったのか。
大野先輩と仲良しの先輩が、連絡つかないと思うけど、と連絡先を教えてくれて、思い切って電話とラインをしてみた。
けど、最早日本にいないのか、既読すらつかなくて、3ヶ月後、とうとうこの番号は使われておりません、と変わってしまった。
私は絶望した。
思いを伝えることもないまま突然嵐のように消え去った彼を想って、この一年泣き続けた。
せめて好きだと言いたかった……！
そんな私の運命が変わったのは。
1年経って落ち込むのも泣くのも飽きて、そろそろ次の恋でも探そうかと思っていたときだった。
何の変哲もない秋の休日のこと。
たまたま入った小さな古書店の隅っこに薄い大学ノートくらいの冊子があることに気づいて手にした。
題名はもう字がかすれて全く読めない。
「すみません、これ何ですか？」
店員さんに声をかける。
「……なんだろう？」
おじいさんが冊子を手にしてぼーっと眺める。
返事を待つ私。
「……100円でいいよ」
「いや、値段を聞いたわけではなく」
「本は出会いだよ。わしはかれこれここで40年本屋を開いておるがそいつを見つけた人はおらなんだ」
「……まぁ、本の間に入り込んでましたからね……しかも誰だか全く知らない人の自伝の中に」
「ううむ」
このおじいさん胡散臭い。
「買い取った記憶がないのですか？」
「この店は先々代からやっておるでなぁ」
「……へー」
「買わないなら元に戻しておいて」
本を預かって中をパラパラと開く。
『本ふなかひがね』
「……」
本ふなかひがね？
ああ、左から右に読むのか。
『ねがひかなふ本』
願い叶う本！
胡散臭い！なにこれ！でも。
ぽわん、と浮かんだのは会いたくてたまらないあの人の笑顔！
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ああ(プロフ) - 面白かった…!明日早いのに最後まで読んでしまいました。ありがとうございます (2022年6月27日 2時) (
レス) @page49 id: 332a1fd98b (このIDを非表示/違反報告)
あきら(プロフ) - たまらなく幸せな気持ちになれました…よしの先生の書かれる大野さん大好きで何度も読み返してます。素敵なクリスマスのおそそわけありがとうございます。 (2021年12月25日 21時) (レス) id: 65b0e8ea2e (このIDを非表示/違反報告)
羊羽。（よう）(プロフ) - メリクリ〜☺クッソ面白かったよー。完結乙でした！ (2021年12月25日 17時) (レス) @page49 id: 07dccdc548 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ(プロフ) - よしのさん、メリークリスマス🎄そして完結お疲れ様でした。不器用で大きな優しさの大野さんにキュンでした〜( ´艸｀)ありがとうございました！新作もおにぎりも楽しみに待っています。ご無理なさらずよしのさんのペースで！ (2021年12月24日 11時) (レス) @page49 id: 7572200b1c (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 大野君が課長たちに啖呵切ってくれたところ、カッコよかったですね。それと、おにぎりが恋しいです。 (2021年12月18日 5時) (レス) @page44 id: 3ab06130a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年10月29日 16時
