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「ん？」
何か言いたい様子だったから問いかける。
なんか言ってる。
口パクパクしてるけど、声小さい。
「え？」
「カノ……こ……てるの？」
「え？何？聞こえない」
なんか一生懸命言ってるな。
Aの口元に耳寄せる。
彼女？がなに？
ドライヤーを切って、ん？って聞き返す。
刹那訪れる静寂。
「彼女にもこんなことしてあげるの？」
吐息混じりの声。
羨ましくてたまらない、みたいな言い方で、なんだか胸がギュと痛む。
「しないよ」
「……」
「お前が初めて」
耳元でそう言うと、Aは泣き出しそうな目でうつむいた。
彼氏にこんな風に、大切にしてもらったことはないの？
Aがしてあげる方なんだろうな。
何か思い出したのか、泣き出しそうに目を伏せた。
Aの髪が大体乾いたあと、手ぐしで髪を整えながら、これでいいかな、とつぶやいたら、小さい声で「ありがと……」と言った。
うるうると瞳が滲んでる。
様子が変。
「A」
「ん？」
「お前本当に大丈夫？」
「なにが？」
「彼氏の浮気だよ」
「ああ！大丈夫だよー、全然平気だもん。櫻井くんもご存知の通り今頃浮気相手と、あんなことやー、こんなこと……」
から元気。みてられない。
「そこまで言わなくていい」
言葉を途中で遮ったら、Aが黙り込む。
「平気だって思っててもダメージあるに決まってんだろ、バカ。無理すんな」
「ありがと」
Aが素直にそう言った。
ドライヤーを片付けて戻ったらAがちょこんと座って俺を待ってる。
捨てられた子犬か子猫みたいな目。
「……だってさ、12年でしょ？俺とお前は7年だけどさ、たかが友人関係でも離れるとなったら寂しくてキツイもん俺」
「……」
「うちはあんま転勤とかないけど……親会社に出向はあるわけじゃん？そうなったら……ほとんど会わなくなるよな」
「……え。なんで？」
「仕事帰りに飯行こーってのができなくなるだろうし」
「でもご飯くらい待ち合わせしていこうよ」
「仕事帰りってのはもう無理だろ」
苦笑したら、Aがめちゃくちゃ驚いた表情で必死に俺を見た。
「え、やだよ……行く」
「無理だよ、遠い」
「仕事帰りが無理なら休みの日とか……」
「無理無理。だって俺たちはお互いにただの友達だと思っててもさ、周りから見たら一応男と女でしょ？」
「……それが何よ……」
Aは気づいてなかったんだ。
俺達の関係がひどく脆いことを。
Aは、気づいてなかったんだ。
男女の友情の脆さを。
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あーり(プロフ) - 彼サイドとても嬉しいです。あの時の行動にそんな思いがあったのか！とドキドキしながら読ませていただいています。これからの更新も楽しみにしています！ (2021年3月6日 23時) (
レス) id: 55a75ee2ee (このIDを非表示/違反報告)
ささたく(プロフ) - 強く賢い女性、きっと彼も好きなのでしょう。でも。雑ではあるけど元カノの気持ちも理解できるかなあと。主人公の聡明さを重く感じる男性もいそうですよね。恋の道は難しい！次回も楽しみにしています！ (2021年2月28日 17時) (レス) id: 0cad052d81 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - おはようございます。やばい。と無理。しか言ってない(という印象ww)櫻井くん堪らない(泣)好き(泣)次の更新は違う意味でﾊﾗﾊﾗするの分かっていても楽しみにしてます！もう1回読んでこよう♪ (2021年2月26日 10時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 待ってました！待ってましたとも！しょっしょっしょうさーーーん！やべえ！なんだこれ！って心の呟きが全てリアルボイスで再現されててニマニマ読んでました！ヒロインちゃんが葛藤していた時に翔さん脳内はずっとやっべ！やっべ！ってお花畑だったんですね♪堪らん！ (2021年2月26日 9時) (レス) id: b75159ca86 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - 更新ありがとうございます！この時の翔くんはこんな気持ちだったんですね…！幸せそうな様子にこちらまで幸せな気持ちになりました。 (2021年2月26日 4時) (レス) id: fe478f12ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月18日 0時
