12 ページ12
Aがキッと俺を睨んだ。
カバンを抱きしめて思わず防御！
「は？彼氏に歩調合わせろ、いびき治してあげろ、歩くときは車道側歩け、結婚してないのに亭主関白すんなとか言ってくれんの？」
「言えない……」
「でしょ、櫻井くんは彼女にそう言われないようにしとけばいい」
確かにそうだけどさ。
でもさ。
A、俺にはそんな風にポンポン言いたいこと言うくせに彼氏には何も言えないんだな。
我慢してるのかな、嫌いとか言ってても、結局好きなんだよな、きっと。
天邪鬼なAのことだから、嫌いって、大好きって意味かもしれない。
可愛いとこあるじゃないか。
「……でも意外だな」
「なにが？」
「俺には何でも言いたいこと言えるAが彼氏には我慢してるんでしょ。好きなんだなぁ」
Aは困ったように目を伏せて黙り込んだ。
眉を下げて、とろりとした目で熱いため息を吐く横顔が儚くて青白くてキレイで一瞬ドキッとした。
具合悪い女にドキッとするとか俺正気か？
「さて、少し顔色は良くなったけどまだ具合悪そうなのでAは早く帰りなさい」
「櫻井くんは？」
「一旦会社戻ろうかな」
Aがその眉を下げてとろんとした目で青白い頬で消えてしまいそうな雰囲気で、帰っちゃうの？みたいな顔をした。
長い付き合いで知ってる。
Aは可愛がってた後輩が辞めたとき、尊敬してた上司が退職したとき、まだもう少し一緒にいてほしいとき。
寂しいよ、って顔をする。
「あは、寂しそうな顔すんなって」
「はっ？」
Aの頬がバッ、と、赤くなる。
ほっぺを両手で押さえて泣きそうになった。
「え……A……？」
「……見るな……」
「え、何その反応……」
「私が寂しがるとかありえない」
「寂しい日とかない？」
「ない！」
「ない？」
「ない……」
「ないんだ、へぇ」
はは、と笑ったら怒ってる。
自分が寂しがりやだって自分で気づいてないとか自分のこと全然わかってない。
「なによ！」
「可愛いやつ」
「なんだそれ！」
怒ってる怒ってる。
怒らせとこう。その方がお前らしいし。
駅について、じゃあな、気をつけろよって言ったら、Aは拗ねたように手を振った。
ちゃんと手を振り返すとこ可愛いな。
お互い同時に背を向けて歩き出す。
少し歩いて、あいつちゃんと帰ってるかな、ってなんとなく不安になって振り返った。
……え？なんで？
Aが、ぽつん、と立ち止まって。
俺の方を見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーり(プロフ) - 彼サイドとても嬉しいです。あの時の行動にそんな思いがあったのか！とドキドキしながら読ませていただいています。これからの更新も楽しみにしています！ (2021年3月6日 23時) (
レス) id: 55a75ee2ee (このIDを非表示/違反報告)
ささたく(プロフ) - 強く賢い女性、きっと彼も好きなのでしょう。でも。雑ではあるけど元カノの気持ちも理解できるかなあと。主人公の聡明さを重く感じる男性もいそうですよね。恋の道は難しい！次回も楽しみにしています！ (2021年2月28日 17時) (レス) id: 0cad052d81 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - おはようございます。やばい。と無理。しか言ってない(という印象ww)櫻井くん堪らない(泣)好き(泣)次の更新は違う意味でﾊﾗﾊﾗするの分かっていても楽しみにしてます！もう1回読んでこよう♪ (2021年2月26日 10時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 待ってました！待ってましたとも！しょっしょっしょうさーーーん！やべえ！なんだこれ！って心の呟きが全てリアルボイスで再現されててニマニマ読んでました！ヒロインちゃんが葛藤していた時に翔さん脳内はずっとやっべ！やっべ！ってお花畑だったんですね♪堪らん！ (2021年2月26日 9時) (レス) id: b75159ca86 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - 更新ありがとうございます！この時の翔くんはこんな気持ちだったんですね…！幸せそうな様子にこちらまで幸せな気持ちになりました。 (2021年2月26日 4時) (レス) id: fe478f12ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月18日 0時
