5 ページ6
コンコン。
ノックの音がした。
「はい」
大野さん起きてたんだ。
しかも凄い体重がない人みたいにフワリと起き上がってドアの方に向かう。
「失礼しま……あ！いた！」
櫻井くんがくりくりの目をドアの間から覗かせて俺を見てニコニコした。
「どうしたの？」
「探してた」
「え、何？」
「新情報だよ、最初、被害者全員、大金を引き下ろしてたから、そのまま失踪したんじゃ？って思われてたけどね」
「あ、うん」
「あのお金、使われた形跡がないって言ってたと思うんだけど」
「そうだったね」
「ついこないだの被害者のDさん。お金下ろしたあと一軒だけお店に行ってた」
「どこ？」
「酒屋」
櫻井くんがニーッと笑った。
「酒屋……？」
「すぐその酒屋に行ったけど、そんなの覚えてないって言われてね、でもジャーナル？っての？レシートみたいなのを見たら時間帯的にこれかこれかを買った、ってのはわかって」
「うん」
「さっき、紙袋持ったDさんの画像を近くのコンビニの防犯カメラに映ってるのが見つかったんだって」
「うん」
「紙袋を見た店主さんが、じゃあこの人で間違いないって思い出してくれた」
櫻井くんがふふ、と笑う。
「で、のし紙『奉納』って書いてくれって言われたことも思い出してくれたんだよ」
「奉納……？」
俺が聞き返して、皆がゴクリと息を呑んだ。
「神社とかに持っていく御神酒かな、お金と一緒に持っていこうとしたんだろうね」
「どこへ……？」
「一人で滝行に行ったんじゃない、誰かお供えしたい人がいた、しかもそれは神社みたいな、お祓いができる人ってことになるよね」
「……うん」
ここにいる櫻井くん以外の全員が富楼那に違いないと思ってるけど、まずは話を聞いてからだ。
「で、ここからが問題」
「うん」
「そのお酒、ここらへんではこの酒屋しか仕入れてない珍しい、福井かどこかの地酒だった、写真はこれ」
「……」
「まだ飲み切ってないかもしれないからそれを探し……」
「そのお酒に、酒屋さんの指紋ついてる？」
大野さんが櫻井くんにそう聞く。
「そりゃ、多分……捨ててなければ……」
「じゃあ行こう」
「どこに」
「よろずなんとか。事務所に置いてあったと思うんだけど」
大野さんが立ち上がろうとして、皆が待て待て待て！と突っ込んだ。
「どういうこと……？」
櫻井くんが目を丸くした。
そりゃそうだ。
あぁ、一から説明しなきゃ。と思った瞬間、櫻井くんが俺の目を見て、大丈夫、と言った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6677人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よみ(プロフ) - …よしのさん！零課の更新、ありがとうございます！よしのさんの作品の中で一番惹かれてやまないシリーズなので、本当に嬉しいです！また1番はじめから読み返してきます！ (2022年9月9日 7時) (
レス) @page38 id: 9926011e11 (このIDを非表示/違反報告)
aap(プロフ) - 大好きな作品なので何回も何回も読み直してます！最後の相葉くん目線のピンクの花びらのトコロがあったかくてうるっときます。翔さん目線も気になるー！またお話湧いてきたら続編待ってます！ (2021年9月2日 23時) (レス) id: 4a13db19c7 (このIDを非表示/違反報告)
ミア(プロフ) - 零課のお話。毎回とても楽しく読ませていただいてます。また気が向いたら是非、書いてくださいね。お待ちしています。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: e156588e92 (このIDを非表示/違反報告)
ひつじー(プロフ) - よしのさん、こんばんは。最後の相葉くんと翔さんのシーン、そして、皆でラーメン食べるくだり、切なくて涙ポロリでしたよ。世界中でただ一人の大切な人に、出会えてよかったな…。翔さんに幸あれ！！ (2021年8月20日 21時) (レス) id: 38fc399fe7 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 完走お疲れ様でした！雅紀くん目線で進むのが嬉しくて、内容はやっぱり怖いけど、出会って仲間になって絆が深まっていくのを知れて嬉しかったです！現在進行形でエンディングを迎えたのも、またいつかどこかでショートショートで再会出来るかな？弁天様目線でとか！うふ (2021年8月20日 6時) (レス) id: 66137a872d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月18日 16時
