60 ページ20
その時、テーブルの上にあった櫻井くんのスマホがブーン、と、震えた。
びくっとして指が離れる。
櫻井くんが私の手を見下ろす。
離れてしまった指を目で追ってから、私の目を見た。
「櫻井くん、電話だよ」
「ああ」
櫻井くんはスマホを一瞥しただけで動かない。
「櫻井くん？」
「俺やっぱ駄目だわ」
「何が？」
「Aはここにいていいよ、俺ちょっと出かけてくる、明日の朝に帰る」
「え、どこいくの？」
「どこ行こうかな、女の家とか？」
櫻井くんが苦笑しながらそう言って、立ち上がって私を見下ろした。
「え……どうして？」
「……」
「あ。まって、じゃあ、私が帰る」
「何言ってんの？」
「え、だって……」
「家に帰ったら圭太と会うだろ？」
「お母さんに別れたって言うから大丈……」
「仲直りしなさいって言われて入ってきたらどうすんだよ」
「……」
その可能性は大だ。
お母さんは圭太にめちゃくちゃ甘い。
「櫻井くんに関係ない」
「いいから、ここにいろって」
「だって、こんなのおかしいよ」
「おかしくねーよ」
「おかしいよ」
「おかしくない！」
櫻井くんが吐き捨てるように言った。
「櫻井くん？どうしたの？」
「わかんねーの？俺は！お前と圭太を会わせたくないって言ってんの！」
「どうして？」
「お前絶対圭太と寄り戻すだろ」
「戻さないよ」
「戻すんだよお前は！」
櫻井くん怒ってる。どうしよう。
しかもなんで怒られてるのかわかんないよ。
「戻さないよ……」
「言わせてもらうけど！お前は情にほだされて俺とも関係を持った女なんだぞ？自覚しろ！」
「……ええ？」
「圭太なんてお前のこと簡単だなって思ってるよ絶対に！会ったらより戻す、賭けてもいい」
「……そんなことない、私そこまで馬鹿じゃないもん……」
「そんなことあるんだって！じゃあなんで俺のこと拒まなかったんだよ、バカ！」
「な、に言ってんの……？じゃああんたこそなんで私に手出したのよ……？」
櫻井くんがコートを羽織る。
財布とスマホをポケットに入れた。
「じゃあ。タオルさっき畳んでくれたやつ使って？着替えこれでいい？あと洗濯乾燥機自由に使っていいよ」
急に優しい声で力が抜ける。
「はぁ？」
「ベッドもどうぞご自由に。冷蔵庫の中のものなんでも飲んでいいよ」
「何言ってんの？」
「明日帰る。ひとつだけ言っとく、鍵開けたまま帰ったらぶっ殺すからな」
最後に睨まれて部屋を出ていく。
ガチャリと鍵のかかる音がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2099人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みい(プロフ) - よしのさんの書くお話、雰囲気というか、世界観というか、とにかく大好きです。どっぷりと感情移入しながら一気に読み切ってしまいました。続きもこれから読むのが楽しみです！ (2021年8月23日 1時) (
レス) id: d3369a3b66 (このIDを非表示/違反報告)
もここ*(プロフ) - 続きが気になって、イッキ読み。よしのさんのお話読めてしあわせ。よしのさんの描く女の子のようになりたいと、いつも思います。憧れです。続きも楽しみにしています( *´艸`) (2021年3月3日 1時) (レス) id: b403a3e65f (このIDを非表示/違反報告)
SUU(プロフ) - 無の証明大好きですが、新しいお話もめちゃくちゃ良かったです。最高でした！よしのさんのお話を読んでいると、指先まで甘く痺れてくるような不思議な感覚のせつなさが伝わってくるんですよね。わかりにくくてすみません。これからもずっとファンです。 (2021年2月13日 13時) (レス) id: 3781250d3f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 翔くんのお話が好きです！そして、ヤンデレだと興奮します。つまり、翔くんのヤンデレが見たいです。バッドエンドで！w (2021年2月12日 1時) (レス) id: 9047bc9b5d (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - はぁ〜面白かった(*´-`)もうね、くっつく事はわかってました。職場の皆様と同じです(*´∀｀)ただ、違うのは経過を知れると言う喜びですよね。現実には当人同士にしか知り得ない事なので楽しませて頂きました。よしのさん、本当にいつも作品を産んでくれてありがとう。 (2021年2月11日 0時) (レス) id: 96f199fab2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月2日 7時
