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櫻井くんが眠ってる間に、ゆっくりお化粧をして、髪を整えて、服も着替えた。
無防備にポイって脱ぎ捨てたニットを拾いながら、自分の行動の浅はかさに自己嫌悪が止まらない。
櫻井くんには申し訳ないことをした。
きっと櫻井くんは、寂しくて寂しくて死にそうだって泣く私を見て、助けてあげようと思ったんだ。
優しい人だもの。
昨日、櫻井くんは私を助けてくれただけ。
下心なんてなかった筈。
そして昨日の私は救われたけど、今日の私はもう誰も助けてくれない。
しっかりしろ私。
7時前になって、流石に起こさないとまずいかな、と思って櫻井くんを起こす。
「ねぇ、櫻井くん」
「……」
「起きて、櫻井くん？」
「……ん？」
眠そうに、そして不思議そうに私を見上げて、あは、って。
眩しくて優しい笑顔を見せた。
胸が張り裂ける。
罪悪感がガリガリと内側から爪を立てる。
奥歯がカチカチ、と鳴った。
強張った私の表情を見て、櫻井くんがガバッと体を起こす。
「今何時？」
「7時少し前だよ」
「7時か、まだ大丈夫だよな、ここから会社まで約一時間で着くし……」
「私は一旦家に戻りたいからそろそろ出るね、櫻井くんはまだ大丈夫だよ、どうせネクタイの替えは持ち歩いてるでしょ？」
「……うん」
「私は9時ギリギリかなぁ、じゃあ先に行くね」
「え、待って、A？」
「ん？」
「……A、あのさ……俺」
ああ、私、漫画とか小説とかでこういうシーンよく見たよ。
『なかったことにしよう』とかどっちかが言い出すやつ。
なにこれ、意味分かんない、なかったことにできるわけないじゃないの。
後悔するくらいならやんなきゃいいのに、この主人公馬鹿だなぁ、くだらない。
なんてこと、普通に思ってたよ。
心底バカにしてたよ。
流される女が悪いと思ってたよ。
それに乗る男も最低だって。
当事者になって、やっとわかった。
たしかに馬鹿だ。
だけど、後悔はしてない。
ただ、取り返しのつかないことをしてしまったという罪の重さに耐えきれない。
だから、必死に言い訳を探して、探して探して、幸せだったって思ってる自分をも見つけてしまって。
混乱の末に出た言葉がなかったことにしよう、なんだろうなきっと。
私はそんなこと絶対言わない。
なかったことにはできない。
けど君の罪悪感を消すことはできる。
「ん？なに？」
「……」
「昨日だいぶ飲んじゃったね、頭痛い」
「うん……」
戸惑う櫻井くんに胸がぎゅ、と音を立てる。
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みい(プロフ) - よしのさんの書くお話、雰囲気というか、世界観というか、とにかく大好きです。どっぷりと感情移入しながら一気に読み切ってしまいました。続きもこれから読むのが楽しみです！ (2021年8月23日 1時) (
レス) id: d3369a3b66 (このIDを非表示/違反報告)
もここ*(プロフ) - 続きが気になって、イッキ読み。よしのさんのお話読めてしあわせ。よしのさんの描く女の子のようになりたいと、いつも思います。憧れです。続きも楽しみにしています( *´艸`) (2021年3月3日 1時) (レス) id: b403a3e65f (このIDを非表示/違反報告)
SUU(プロフ) - 無の証明大好きですが、新しいお話もめちゃくちゃ良かったです。最高でした！よしのさんのお話を読んでいると、指先まで甘く痺れてくるような不思議な感覚のせつなさが伝わってくるんですよね。わかりにくくてすみません。これからもずっとファンです。 (2021年2月13日 13時) (レス) id: 3781250d3f (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 翔くんのお話が好きです！そして、ヤンデレだと興奮します。つまり、翔くんのヤンデレが見たいです。バッドエンドで！w (2021年2月12日 1時) (レス) id: 9047bc9b5d (このIDを非表示/違反報告)
にゃん(プロフ) - はぁ〜面白かった(*´-`)もうね、くっつく事はわかってました。職場の皆様と同じです(*´∀｀)ただ、違うのは経過を知れると言う喜びですよね。現実には当人同士にしか知り得ない事なので楽しませて頂きました。よしのさん、本当にいつも作品を産んでくれてありがとう。 (2021年2月11日 0時) (レス) id: 96f199fab2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月2日 7時
