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まさか。
この病院が一気に崩れるとか？まさか。
「A、早く行け！」
二宮さんにそう言われて、慌てて二宮さんの肩を借りて窓枠に登って飛び降りる。
そのあと、二宮さんも飛び降りた。
次いで櫻井さんが飛び降りてきて、まだぐったりしてる河東を引きずり降ろそうとしてる。
左手が使えなくて役立たずの私は崩れかけていた非常口の方を見て様子を窺うことしかできない。
また急に、ピシッと高い音がした。
その後すぐにガガガ！と大きな音。
「わ、」
病院の半分くらいが、巨人に踏みつぶされたかのようにぐしゃりと崩れた。
一瞬、砂埃がもわっと広がったけど雨のおかげですぐにそれは治まる。
「こっちも崩れる？」
「多分こっちはまだ保ちそう！でも早く！」
河東を引きずりおろして、相葉さんが窓から飛び降りて、最後に大野さんがヒラリと足音も立てずに地面に降り立った。
「河東が俺らを殺そうとした証拠が何も残らなかったな」
松本さんが悔しそうに非常口のあった方を見る。
メキメキ、と嫌な音がしたりして今はまだ危ない、近づけそうもない。
「明日の朝、明るくなってからもう一度……」
松本さんがそう言いかけて、フッと言葉を切る。
「ん？」
私も同じ方向に目を向ける。
雨が少し弱まった。
「あれは……邨田さん……？」
松本さんが眉間にシワを寄せる。
私にはなんにも見えない。
その時。
ふわっと声が聞こえた気がした。
……こっち。
松本さんが崩れた壁の方に向かって歩き出す。
崩れた非常口の方。
壁が崩れてる。
「危ないよ！」
二宮さんが声をかける。
それでも松本さんが歩いていく。
「指……さしてる……」
松本さんの後ろをついていって、松本さんが崩れた壁の前でピタリと立ち止まった。
「……あ」
「ん？……あ」
崩れた壁の中に。
明らかにそれだとわかる形で人骨が見えた。
「工事、されたくなかった理由はこれか」
松本さんが壁に向かって両手を合わせた。
私もそれに倣う。
「行こうか、中間さんに連絡しよう」
「京都府警は？」
「上の方の指示を待つほうがいいだろうな」
ため息を吐いてみんなのもとに戻る。
まだぐったりしてる河東を見下ろして松本さんが静かな声で言った。
「邨田さんを殺して壁に埋めたのは貴方ですか」
「……」
「お話、聞かせてもらいますね」
病院の方に歩いていきながら、もう一度旧館を振り返る。
……見つけてくれてありがとう。
声が聞こえた気がした。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
