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「あっつ……」
外に出たら湿気を含んだ熱風が私達を包む。
ここは魔界か？と聞きたくなるようななんとも言えないねずみ色の空が広がっている。
嵐が来そうな空。
やはり、というべきか。
ぽつり、ぽつりと雨が降り出した。
かと思ったら突然、バケツをひっくり返したかのような激しい雨が私達を襲う。
「早く中に！」
私達が旧館の中に入ろうとしたら、松本さんが立ちすくんだ。
「そこ、濡れるよ！」
「……いる」
松本さんがゴクリと喉を鳴らした。
「なにが？」
「わからない、けど入りたくない」
松本さんが病院に入るのを躊躇った。
その時。ピカッと稲光が周りを包んで、ゴゴゴと嫌な音がした。
「雷！早く中に」
「ねぇ、やっぱ今日はやめとかない？」
松本さんが大きな声で言う。
「え？」
「やめたほうがいいと思う、明日の昼にしない？」
「どうして？」
「だって」
松本さんが何かを言いかけようしたら、松本さんのすぐ後ろにゆらりと揺れる人影が見えた。
真っ黒なレインコート。
手には、鎌……？
「松本さん！後ろ！」
「後ろ？」
松本さんが振り返る。
「わ！」
松本さんが慌てて私達の方に駆け寄ってきた。
ばたん。
扉が閉まった。
「どうした？」
先に行きかけてた大野さんと二宮さんが戻ってきて私達を見る。
「誰か今の見た？」
櫻井さんと相葉さんに聞く。
「ん？何？」
「へ？」
松本さんと私の目があった。
「A、見た？」
「見たよ、真っ黒のレインコートなのかな、濡れて光ってて……手には鎌みたいな」
「顔を見た？」
「顔はタオルか何かで覆ってて目までフードがかぶさってて顔は……」
「……A」
「……ん？」
「あれは、どっち？霊？人間？」
松本さんが途切れ途切れに言った。
「わかんな……」
「え？外に誰かいるの？」
相葉さんが扉を開こうとしてるのを見て、やめて！と悲鳴が出た。
「……あれ？開かない……」
「開かない？うそ」
櫻井さんと一緒に扉をガタガタさせてる。
「開かない……」
「どうして？」
「わかんね……」
「でも他にも出入り口あるから平気」
その言葉に、ゾワ、と鳥肌がたった。
そうだよ、他にも、出入り口がある。
「え、どうしたらいい？」
「なんで？」
「鎌の男が入ってきちゃう！」
私がパニックに陥りそうになったのを見て、大野さんが眉間にシワを寄せた。
「鍵閉めて回る？俺二階行く？」
大野さんが行きかけたのを走って抱きついて止めた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
