〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ6)

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「昭和5年に開業、昭和32年に閉院。昭和40年から工事開始、木造からコンクリートに作り変えられる」
櫻井さんが読み上げる。

「うん、そのときは特に事故はなかったみたい……」
「じゃあどうして一度コンクリートにした病院を使わないまま取り壊しをすることに？」
「さぁ……」

「ああ、それは俺らが調べたところだね」
二宮さんが口を開いた。

「ちょっと話せば長くなるけどいい？」
「どうぞ」

みんなが二宮さんを見た。

「実はね、あの病院が閉まる少し前に、若い女性を狙った殺人があったんだよ、その被害者がこの近くの人でさ」
「うん」
「でね、昭和32年のマサトシくんがいなくなった夏、23歳の女性患者さんが一人失踪してる、最初は連続殺人に巻き込まれたんじゃ？って噂になった」

二宮さんが一旦言葉を切ってお茶を一口飲む。

「連続殺人なんじゃ？ってこの辺で噂になった理由は、一人目の殺された女性の死因は刺殺で凶器は農業用の鎌と鉈だったからだね、犯人は未だに捕まっていない」
「……」
「凶器が鎌、と聞いたここの病院の看護師さんは震え上がった。だってこの病院で鎌男、目撃されてるんだから」
「だろうね」
「失踪した23歳の女性、えっとエダノキヌコさんも鎌の男に襲われたんじゃ？って噂になった。だってマサトシくんと歩いてる鎌の男の姿を見たとか言った人もいたし」

全員が言葉をなくす。
二宮さんが続けた。

「マサトシくんのお母さんと地元の名士さんのせいで工事が一旦ストップしたでしょ？で、1965年ごろまた工事を再開した、んだけど」
「うん」
「そこでさ。あのマサトシくんが溺れて、慌ててコンクリートで埋めたあの池から白骨死体が発見された」
「……」
「劣化が酷くて誰なのかわかんないけど、DNA鑑定で恐らくエダノキヌコさんの可能性が高い、ということになった」
「……え……」

私達が固まってたら、二宮さんがフフンと笑う。

「って話をおしゃべり好きなおじいさんに聞いたんだよね、ちょっと調べたら殺人事件とか人骨が発見されたこともわかったんだけどさ」
「……」
「病院と関連付けて考える人なんてやっぱり噂好きの近所の人だよね、骨が見つかったのってのも内緒にしてても、工事してた作業員からのすーぐバレちゃうし」
「それで工事が止まったの……？」
「そう。院長言ってなかった？」
「50年前なら……院長、学生だよな……」

全員同時にため息が出た。