迎えに来た王子 ページ34
石田くんの足音が近づく。
ああ、私殺されるんだ。
私の死体は日本海に捨てられて？
その前に拷問とかされるかも。
ほらね、やっぱり王子は助けに来な……
その時廊下にピカッと懐中電灯の光が見えた。
え？
もしかして、斉藤部長戻ってきてくれた？
「誰かいますか？」
チッ、という舌打ち。
石田くんがこっちを見た。
何か、キラッと光るものが飛んできた。
痛！
頬に何か当たった！
悲鳴を上げるのを必死でこらえる。
バタバタバタ。
石田くんが走って逃げる気配。
「わ、ちょっと！」
懐中電灯の声の主が石田くんを追いかけたのかな、タタタタ、と足音が遠ざかる。
ふー、肩の力が抜ける。
怖かった。
怖かった。
まだ膝に力入んない。
今頃ガタガタ震えが来た。
まずいな、石田くん何食わぬ顔で、なんの騒ぎですか？とか言って戻ってきたら私が警報を鳴らしたってバレちゃう。
私も逃げなきゃ。
しばらく呼吸を整えてから、立ち上がる。
あ、だめ。
ぐらりと体が傾いて、バタッ、と両膝をつく。
動け、私の足！
その時、またコツコツ、と足音が聞こえた。
誰か、来た！
石田くんが戻ってきた？
慌てて逃げようと床に両手をついて、体を動かそうとしたら、ぱち、と企画部の電気がつく。
「………A？」
「……」
よかった、櫻井さんだ！
顔を見た途端、ホッとして、ぺたりと床に座り込む。
櫻井さんが、血相を変えて走ってきた。
「……A！」
「櫻井さ……」
涙がいっぱい出てきた。
涙を手で拭ったら、視界に赤が見えて、あれ？と戸惑う。
「お前！ちょ！大丈夫か？」
櫻井さんがスライディングで私の前に跪く。
櫻井さんが泣きそうな顔になった。
「なにされたんだよ！なんでこんなことになってんの？」
櫻井さんが自分の胸ポケットからポケットチーフを取り出した。
そのまま私の頬にハンカチを当てる。
「え？」
「Aの可愛い顔が血塗れなんだけどナニコレ！」
「血？」
自分の手を見たら、涙と一緒に血もついてる！
さっきまでいた場所を見たら、ハサミが落ちてた。
ゾッとした。
もし、櫻井さんが来なかったら私。
「櫻井さん……」
「ん？他は？どこも痛くない？」
「怖かった……」
「……うん、そうだよな」
「あは、震え止まんな……ひっ」
櫻井さんが突然、私の体をぎゅーって抱きしめた。
「……あそこに落ちてるのハサミじゃん」
「うん」
「ごめん。遅くなってごめん」
櫻井さんが、そう呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3599人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いろは(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！！TwitterのフォローをさせてもらったのですがDMが送れずこちらから送らせてもらいます。SUZUIROというアカウント名です！ (10月5日 20時) (
レス) @page47 id: 7b03d9df09 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 完結、おめでとうございます！よしのさんのお話はいつも楽しく読ませていただいています！ (2020年3月25日 20時) (レス) id: 29ae961861 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - よしのさん、こんにちは！とにかく、とにかーく面白かった！一気読みしました！久しぶりに朝方まで（徹夜に近い）読んでいました。もう本当に読むのが楽しいってこういうことなんだって思いました！ (2020年3月10日 11時) (レス) id: 6cd0f843d6 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - おもしろかったー！一気に読みました！読後感がスカッと爽やか(^O^) ありがとうございました！ (2020年3月1日 9時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
mikoto020707(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしてました。終わってとても寂しいです。両思いになってからも櫻井さんが振り回される続きが読みたいです。よろしくお願いします。 (2020年2月27日 9時) (レス) id: 285ed8c737 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年2月11日 8時
