王子vs役立たず ページ38
「えーっ……と？」
我ながら妙な聞き返し方をした。
「リスクマネジメント。情報漏洩などのリスク、自然災害によるリスク、あとはリコール、社内コンプライアンス、人事的なもの、ざっとこんなもんか」
櫻井さんが足を組んだ。
王様ですか？ってくらいの威圧感。
「……」
「こないだのホームエレベーターのクレームの件、お前が対応したんだろ？」
「ああ、はい」
「聞き出せた少ない匿名の情報からどの顧客か大体の予測たてて、三日以内にそれに該当する顧客全ての緊急メンテナンスに向かわせた」
「……」
「事故が起こってからの損害賠償、企業の信頼の失墜、万が一リコールに関わる問題に発展した場合の損害を考えると安いもん」
櫻井さんが私をちらっと見る。
通り過ぎる街の灯が櫻井さんの目をキラリと光らせた。
「……そうですね」
「なのに。あのクレームはいたずらかもしれないから様子を見ようと言い出したのが危機管理委員会の総意」
「はっ？」
「危機を安易に危機だと認めたせいで及ぶ社会的影響を心配する本末転倒」
櫻井さんがスラスラと話す内容がなかなかの情報量でちょっと処理が追いつかない。
「第一、今回の件も妙だなと気づいたのは、曽祖父の時代から取引させてもらってるネジ工場の社長からのタレコミでさ」
「……はい」
「俺が社内の怪しいやつを全員洗えって言ってるのに危機管理委員会の奴らはそのネジ工場の社長を疑った」
「ええ、酷……」
「自分の工場の利益を上げるためにそんなこと言ってるんじゃないか、とね。それと俺の……若造の話は信頼できないそうだ」
「そんな……」
「仕方ないから誰とでもなんだかんだ関われる総務や人事に入って怪しいやつを探してる」
櫻井さんが宙を睨む。
「意外と……苦労してるんですね」
「デショ」
「見直しました。ヘラヘラしてヌクヌク育ってる御曹司だと思ってました」
「そう思われるように行動してたんだから、騙されてくれてありがとうというべきなんだろうな、ムカつくけど」
なんだよ。
櫻井さんってスゲーできる奴じゃないか。
そしてほんとは気性が荒いのに優しいフリもできるんだし。
普段からこっちでいいんじゃないの？
「じゃあ、味方は……？」
「いない、強いて言うなら……A？」
櫻井さんが私を見てぷ、っと笑った。
「敵の敵は味方という意味でですね」
「理解の早さは味方として頼もしいです、馬鹿と話すと大変なので」
「お褒めに預かり光栄です」
何なの、この嫌味な応酬。
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susakinyanko(プロフ) - 駅前のハトがツボ過ぎます。死ぬかと思った笑 (12月15日 15時) (
レス) @page41 id: 9ec95cf02d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 面白い！眠気がとんだよー！よしのさん好き(^^) (2020年1月30日 10時) (レス) id: 12e1cc5b48 (このIDを非表示/違反報告)
花乃(プロフ) - こんにちは。やっぱりよしのさんのお話好きだー！！と叫ばせていただきます(*´∇｀*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 95a7b7882e (このIDを非表示/違反報告)
ちこ(プロフ) - こんにちは。よしのさんの新作ですね。ゴルゴの回まで一気読みしてしまいました。とっても楽しいです！更新楽しみにしています。 (2020年1月16日 16時) (レス) id: c3adc4cd0a (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - もう、さすがの一言です。やっぱり面白すぎます！最高です！ (2020年1月16日 1時) (レス) id: 586c2240fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年1月6日 0時
