幻の女はどこ ページ37
「飯、どこいく？」
櫻井さんが私を見下ろして聞く。
「櫻井さんに任せます、ひとまず静かなところでゆっくり話したいです……」
「マジな話、近いし家が一番いいんだけど」
「……」
「でもそれはさすがに怖いので」
怖い？殺気出てる？
「半個室みたいな……いわゆるカップルシートのあるお店でいい？イタリアン」
「わぁ、嬉しい！イタリアン大好きです」
「タクシー使おうか、少し距離があるから」
「うん」
タクシー乗り場まで無言で歩いて、タクシーに乗り込んで、ふ、と目が合う。
「えっと……ずっとそのままでいてくれても全然いいんだけど……」
「……ん？」
「調子狂うというか」
「どういう意味ですか？」
ん？って笑いながら首を傾げたら、櫻井さんが私を見て、ガーンって顔をしてシートにずーんと身を沈めた。
「……普通すぎて……」
「……」
「俺が今日資料室で見たのは幻だったのか……」
「えー」
「ネクタイ掴んで吠えてたあの子ドコー……」
「なんのことですか」
「はい、もういいよ、素でどうぞ」
「と言われても……腹を立てていなければこんなもんです、じゃあ意味なく微笑むのはやめてもいいですか」
「……うん」
櫻井さんが窓の外を見ながら何度か頷いた。
「なぁ、さっきメガネの男に公園に連れ込まれてなかった？」
見てたのか！
「同じ派遣会社の人で、石田くんといいます」
「開発部にいたのも見た、同じ部署？あんな奴いたっけ」
「はい、今日からうちに来て……」
「お前ほっぺ触られてただろ、仲いいの？」
櫻井さんが窓の外を見ながらそう言った。
表情がわからない。
「仲良いというか……」
「中西とか他の男にも頭ポンポンされたり腰とか腕とか触られてるだろ、何気安く触らせてんだよ、俺が触ったら殺人鬼の目になるのに」
「……なぜそれを知って……」
「ずっとAを疑って監視してたんだよ、だから知ってる」
櫻井さんが、吐息だけで少し笑ってそう言った。
「みんな馴れ馴れしくて正直不快な時もありますけど、まぁあれくらいならいいかな、と」
「……」
櫻井さんが窓の外を見ながら黙り込んだ。
「櫻井さ……」
「何？」
返事早っ。
どうしたんだ。なんか変。
「一つ確認していいですか」
「うん？」
なんでそっぽ向いてんだ。
「櫻井さんの味方は……何人ですか？」
「味方？」
「危機管理委員会とか……リスクマネジメントはどうなっているんですか」
「ああ、あの役立たず」
櫻井さんが吐き捨てるように言った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2805人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
susakinyanko(プロフ) - 駅前のハトがツボ過ぎます。死ぬかと思った笑 (12月15日 15時) (
レス) @page41 id: 9ec95cf02d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 面白い！眠気がとんだよー！よしのさん好き(^^) (2020年1月30日 10時) (レス) id: 12e1cc5b48 (このIDを非表示/違反報告)
花乃(プロフ) - こんにちは。やっぱりよしのさんのお話好きだー！！と叫ばせていただきます(*´∇｀*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 95a7b7882e (このIDを非表示/違反報告)
ちこ(プロフ) - こんにちは。よしのさんの新作ですね。ゴルゴの回まで一気読みしてしまいました。とっても楽しいです！更新楽しみにしています。 (2020年1月16日 16時) (レス) id: c3adc4cd0a (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - もう、さすがの一言です。やっぱり面白すぎます！最高です！ (2020年1月16日 1時) (レス) id: 586c2240fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年1月6日 0時
