王子と疑惑とその女 ページ29
「……大丈夫です」
「なら、探しながら俺の話を聞け」
おお？
なにこれ。
呆然と顔を見たら、櫻井さんが、フフンと不敵に笑う。どういうこと。
「結論から言う。うちの会社に産業スパイが紛れ込んでる可能性がある」
「……は？」
櫻井さんが腕を組んて私をじいっと見下ろした。
「お前昔ＳＴＭにいただろ」
お前と言われた。
櫻井さん、やっぱりあの爽やかさは表向きの顔だったんだ！やっぱり！
「……なんで知ってるの」
「お前のこと調べた。係長になる少し前に辞めたんだろ？」
「……理由も知ってる？」
「流石にそこまでは。辞めたことはＳＴＭの取引先から聞いた。かなり出来る奴だったって。なんで辞めた？まさかスパイになるため？」
なるほど。
取引先、ということは、私が社内で無双だったことはそんな知らないのか。
「昨日のあの男のせいで辞めたんですよ」
「まさか……彼氏だったとか？」
「違います、奴に既婚者の課長と付き合ってやれと言われて。気持ち悪すぎて辞めました。私が係長になったら課長と二人で出張とかもあるし、虫唾が走る」
「……」
「色々嫌になったんです、一人で生きていける……主夫を養うほどの経済力が欲しかった」
「え？どういうこと」
櫻井さんが吹き出した。
「誰かに依存して私を選んで欲しいとかそういうの嫌なの、私が選ぶ立場でありたい！」
櫻井さんが、絶句して組んでいた腕をだらんと垂らした。
「なにそれ！」
「でもそれも無理だったんですよ、私には玉の輿に乗る才能も玉の輿を作る才能もない」
「……」
「人生諦めて、徹底してモブキャラとして生きていこうとしたら王子に絡まれるし……、私のことは放っておいて！めんどくさい！」
「王子？……俺？」
「今まで出会った男の中で最強の王子ですよ、あなたは」
ああもういいや。
隠しても無駄だ。曝け出しちゃえ。
「……王子」
「そんな王子が私なんかに構う理由は？とずっと疑っていました。なるほど、私がスパイだと思ったんですね？目の付け所、流石です」
櫻井さんの眉間にシワが寄せられた。
「……仰る通り、私がスパイだったらいま研究してる空中のディスプレイを安価で作る開発、他国に売って私はがっぽり大儲け」
「……」
「何も知らない人が見たら普通のデータですけど、私が見たら宝の山ですよ、いいんですか？派遣にこんなことやらせて」
「……だからAを見張ってた」
櫻井さんがそう言った。
すべてが符合した。
大きなため息が出た。
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susakinyanko(プロフ) - 駅前のハトがツボ過ぎます。死ぬかと思った笑 (12月15日 15時) (
レス) @page41 id: 9ec95cf02d (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 面白い！眠気がとんだよー！よしのさん好き(^^) (2020年1月30日 10時) (レス) id: 12e1cc5b48 (このIDを非表示/違反報告)
花乃(プロフ) - こんにちは。やっぱりよしのさんのお話好きだー！！と叫ばせていただきます(*´∇｀*) (2020年1月26日 17時) (レス) id: 95a7b7882e (このIDを非表示/違反報告)
ちこ(プロフ) - こんにちは。よしのさんの新作ですね。ゴルゴの回まで一気読みしてしまいました。とっても楽しいです！更新楽しみにしています。 (2020年1月16日 16時) (レス) id: c3adc4cd0a (このIDを非表示/違反報告)
ジュン(プロフ) - もう、さすがの一言です。やっぱり面白すぎます！最高です！ (2020年1月16日 1時) (レス) id: 586c2240fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年1月6日 0時
